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2019年10月20日(日)

主張

自衛隊の中東派兵

米国への忖度で緊張高めるな

 安倍晋三首相が、中東海域への自衛隊派兵の検討を関係閣僚に指示しました。中東情勢の安定と日本に関係する船舶の安全確保のためとしています。しかし、菅義偉官房長官も「直ちにわが国に関係する船舶の防護を実施する状況にはない」と述べるように、自衛隊派兵の明確な根拠を示すことができません。イランへの軍事的圧力を強め、日本などの同盟国や友好国に役割分担を求めるトランプ米政権への忖度(そんたく)であることは明らかです。安倍政権が口にする「中東地域の平和と安定」にも逆行し、軍事緊張を一層高める自衛隊派兵はやめるべきです。

戦火に巻き込まれる恐れ

 菅氏は記者会見で、自衛隊が活動する地理的範囲として、イランとオマーンの間にある「オマーン湾」、「アラビア海北部」、イエメンとジブチの間の「バベルマンデブ海峡東側」を挙げました。日本の伝統的な友好国とされるイランへの「配慮」で、ホルムズ海峡は避けたとも報じられています。

 しかし、河野太郎防衛相は会見で、オマーン湾にホルムズ海峡も入るのかとの記者の質問に、「そうしたことを含め検討していきたい」「検討の結果次第ではいろいろある」とし、否定しませんでした。

 派兵部隊については、海上自衛隊の新たな艦船を派遣するか、アフリカ東部のジブチを拠点に「海賊対処」活動を行っている海自の護衛艦やP3C哨戒機の活用を検討するとしています。

 トランプ米政権は、敵対するイランへの軍事的包囲網を築くため、有志連合構想・「海洋安全保障イニシアチブ」を打ち出し、日本をはじめ各国に参加を求めてきました。しかし、参加を表明した国は現在、英国やサウジアラビアなど5カ国程度にとどまります。

 菅氏は会見で「米国が提案する海洋安全保障イニシアチブには参加せず、日本独自の取り組みを適切に行っていく」とし、自衛隊独自の活動であることを強調しました。一方で、「米国とは緊密に連携していく」と繰り返しました。有志連合への参加とどう違うのか、説明はありませんでした。

 自衛隊の活動目的については「情報収集体制の強化」とし、法的根拠としては防衛省設置法が定める「所掌事務の遂行に必要な調査・研究」を挙げています。しかし、これは防衛省がつかさどる事務についての規定であり、自衛隊の海外派兵の根拠には到底なり得ません。国会の承認も必要としない上、勝手な拡大解釈で派兵を強行することは許されません。

 トランプ米大統領は今年6月、イランへの爆撃を承認し、攻撃10分前に中止したことを明らかにしています。米国が軍事攻撃に踏み切れば、自衛隊が戦火に巻き込まれる恐れもあります。

憲法9条に基づく努力を

 イランをめぐる今日の問題は、同国が核兵器の開発・保有を目指さないことと引き換えに経済制裁を解除するとした「核合意」からトランプ米政権が一方的に離脱しことから始まりました。自ら危機をつくり出しておきながら、軍事的対応に乗り出すことに何の道理もありません。

 今、日本が果たすべきは自衛隊の派兵ではなく、トランプ政権に核合意への復帰を促し、憲法9条に基づいて対話による外交的解決に力を尽くすことです。


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