2019年10月19日(土)
中東沖に自衛隊派兵
米の要求受け 政府が検討着手
菅氏が表明
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安倍晋三首相は18日、首相官邸で開かれた国家安全保障会議(NSC)で、中東への自衛隊派兵の可能性を検討するよう指示しました。菅義偉官房長官が同日午後の記者会見で明らかにしました。今後、海上自衛隊の艦艇や哨戒機の派兵を検討します。また、アフリカ東部ジブチを拠点に活動している海賊対処部隊の活用も検討する考えです。
米国はホルムズ海峡で敵対するイランをけん制するため、日本を含む同盟国・友好国に「海洋安全保障イニシアチブ」と称した有志連合への参加を要請。日本政府は、長く友好関係にあるイランとの板挟みになっていました。菅長官は有志連合には参加せず、「日本独自の取り組みを行っていく」と述べましたが、米国の要求を踏まえた対応であることは明らかです。
菅長官は派兵を検討する地域について、オマーン沖、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡を挙げ、ホルムズ海峡には言及しませんでした。また、派兵根拠は、防衛省設置法に基づく「調査・研究」であると述べました。自衛隊による日本の船舶防護に関しては「ただちに実施を要する状況にはない」と強調しました。
米主導の有志連合への賛同は広がらず、現時点での参加表明は英国、オーストラリア、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の5カ国だけです。欧州諸国は独自の部隊派遣を検討しています。
解説
米政権助ける中東派兵
核合意復帰促す外交努力こそ
安倍政権が自衛隊の中東派兵の検討に着手しました。
契機となったのは中東ホルムズ海峡での情勢緊迫ですが、そもそもの発端は、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱したことにあります。
自分で危機をつくりだしておきながら、軍事的対応に乗り出すことはまったく道理がありません。だからこそ、米国主導の有志連合への賛同がほとんど広がっていないのです。安倍政権は有志連合とは一線を画す体裁をとろうとはしていますが、イラン情勢をめぐって孤立ぎみのトランプ政権を助けるための派兵であることは明白であり、「中東地域の平和と安定」「わが国に関係する船舶の安全確保」(菅義偉官房長官、18日の記者会見)などとは無縁です。むしろ、軍事的緊張を高めることに加担する行為です。
菅長官は、「緊張緩和と情勢の安定化に向けて、安倍総理大臣が6月にイランを訪問するなど、外交的取り組みをしっかり進めてきた」と弁明しました。しかし、首相はイラン訪問、9月の国連総会でのロウハニ大統領との首脳会談でも米国との橋渡しに失敗しており、何の成果も得られていません。
日本がなすべきことは、欧州諸国などと協力して、イラン核合意から離脱したアメリカに核合意復帰を促す外交努力です。イラク派兵などで揺らいでいるものの、中東では依然として、日本は「9条をもつ国」としての信頼があります。憲法9条に基づいて対話による外交的解決に力をつくすことが、日本の役割です。(竹下岳)