2019年10月9日(水)
志位委員長の代表質問 衆院本会議
消費税 導入31年 廃止しかない
5%への減税 緊急に
8日の衆院本会議の代表質問で、台風・豪雨災害、消費税増税、関西電力「原発マネー」還流疑惑についてただした日本共産党の志位和夫委員長。消費税の根本問題に迫り、具体的な経済の実態を示しながら「消費税の廃止をめざし、緊急に5%への減税を」と迫った志位氏に、安倍晋三首相は質問をはぐらかし、まともに答えられませんでした。
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導入から31年になる消費税が日本社会に何をもたらしたか。具体的数値を突き付け廃止を迫った志位氏に対して、安倍首相は明確な反論もできず、志位氏の論拠を認める場面もありました。
政府は「社会保障のため」「財政再建のため」と消費税の必要性を主張してきました。しかし、31年間に年金は減らされ、サラリーマンの医療費負担は3倍に増え、介護保険は負担だけが増すなど、社会保障は切り下げの連続。国と地方の借金は246兆円から1069兆円へと4倍以上に膨れ上がりました。
「政府の言い分はどちらもウソだったではないか」。志位氏が示した数字を、首相は否定できず「ご指摘はあたらない」と力なく答えるだけでした。
31年間の消費税収397兆円に対し、法人3税の税収は298兆円、所得・住民税の税収は275兆円も減少。大企業と富裕層への減税が繰り返されたのに加え、消費税増税がもたらした経済の低迷が税収を減らしたからです。
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志位氏のこの指摘に対して、首相は「税収の減少の背景」として「制度的要因(減税)」と「経済情勢の要因がある」と事実上指摘を認めたうえ、「引き上げによる増収分は社会保障の財源として活用してきた」と答弁しました。これは、社会保障の財源を法人税や所得・住民税から消費税に付け替えたことを示すだけのもの。志位氏が「弱者から吸い上げ、大企業と富裕層をうるおす。これこそが消費税の正体だ」と迫りました。
さらに志位氏は、消費税が日本を世界でも異常な「経済成長ができない国」にしてしまったと告発。経済協力開発機構(OECD)によると1997年からの20年間に先進国の国内総生産(GDP)は、米国で2・3倍、フランスで1・8倍などに伸びています。しかし日本では1・02倍と、わずか2%しか伸びていません。
志位氏は、97年の5%への増税がバブル崩壊から立ち直りつつあった景気回復の芽を摘み、2014年の8%増税が今日に及ぶ消費不況の原因となったことを挙げ、「たび重なる消費税増税が、日本経済を世界でも異常な長期低迷に落ち込ませた原因の一つだという認識があるか」と追及しました。
安倍首相は「アベノミクス3本の矢の取り組みにより、デフレではないという状況をつくりだした」などと強弁するだけでした。
志位氏は「31年間の消費税の現実に立って、この悪税の廃止を目標とすることをあらためて強く求める」と訴えました。
日本共産党が示した展望
インパクトある家計応援政策を
消費税の正体をあばいたうえで、5%減税を求めた志位氏。首相は、言い訳に終始したうえで「廃止は考えていない」と答えるだけでした。
なぜ緊急に5%への減税が必要か―。志位氏は、1世帯当たりの実質消費支出の低迷、働く人の実質賃金の落ち込みなど、税率8%への引き上げ(2014年)後の景気低迷を経済統計から明らかにし、8%への大増税そのものが間違いであり、経済失政だったことを明らかにしました。
ところが安倍首相は、医療、年金、介護の連続改悪には目をつぶり、「(8%への増税は)単なる増税ではなく社会保障の充実を実施した。これら全体を見れば増税の判断は誤りではない」と強弁しました。
1日に発表された日銀短観は、大企業製造業で3期連続での景気判断が悪化。7日発表の景気動向指数も「悪化」となりました。
志位氏は、「こんなさなかに10%増税など無謀の極み。失政に失政を重ねる『二重の経済失政』といわざるを得ない」と強調。「『5%減税』によって『二重の経済失政』をただすことが必要だ」「いま政治が『5%減税』という家計応援のインパクトある政策を実行することが必要不可欠だ」と迫りました。
安倍首相は、8%への増税後の景気回復の遅れを認めざるを得ませんでした。
財源どうするか 三つの提案示す
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消費税を減税し、社会保障や教育をよくする財源をどう考えるか―。志位氏は(1)持てる者からきちんと税金をとる(2)無駄遣いを一掃する(3)暮らしを応援することで日本経済を成長の軌道にのせて税収を増やす―と提案し、「これを組み合わせれば、消費税に頼らなくても立派にやっていける」と強調しました。
志位氏は、史上空前のもうけを上げる大企業と超富裕層への二つの不公平税制を告発。中小企業(税負担率18%)と大企業(同10%)の格差、株取引にかかる税金の軽さなどを示し、大企業と超富裕層に恩恵を与える「優遇税制を是正せよ」と求めました。
安倍首相は、不公平かどうかには答えず、「課税ベースを拡大し、法人税率を引き下げた」と筋違いの答弁。さらに金融税制による富裕層優遇の実態には目を向けずに「すでに施策を講じてきた」と言ってのけました。
「無駄遣いを一掃するという点では、トランプ米大統領いいなりの米国製武器『爆買い』をやめるべきだ」―。志位氏が取り上げたのは6600億円以上もの巨費がかかる「イージス・アショア」。米国の研究所の論文で、秋田県と山口県への配備目的が「ハワイやグアムの防衛」と明記していることをあげ、「米国防衛としか説明がつかない」と批判し、「こんなばかげた政策は中止すべきだ」と求めました。
また、志位氏は、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に「膨大な血税が注がれている」と批判。「何兆円という規模の血税を注ぐ。このような屈辱的な政治は終わりにすべきだ」と迫りました。
首相は、米国論文には触れることもできず「どうしても必要な装備品で米国防衛のためではない」と答えるだけ。辺野古への米軍新基地建設でも、超軟弱地盤対策を認めつつ「検討中」として具体的な費用さえ答えられず、予算の無駄を温存する姿勢を示しました。
台風・豪雨災害
「住み続けられる街への復興支援を」
8~9月に相次いだ豪雨・台風災害について志位氏は、台風15号被害の調査で訪れた千葉県南部の自治体首長からの要望を紹介。共通するのは「住み続けられる街への復興支援を」(金丸謙一館山市長)という声だとして、公的支援の抜本的強化を求めました。
志位氏は、住宅被害について、南房総市の石井裕市長が「一部損壊への補助はありがたいが、6~8割もの自己負担がある。(補修費を)負担できず『住宅難民』になってしまうことが心配だ」と述べたことを紹介。農林水産業でも大きな被害が出ており、一定の支援制度が発動されても自己負担が重くのしかかると指摘し、「過疎、離農、廃業が進むのではないかというのが一番の不安として語られた」と強調しました。
こうした声を踏まえて志位氏は、「『住み続けられる街への復興支援を』というのは、全国で災害にあった地域の共通の声だ。この声に応えて、現行の支援の枠組みにとらわれず、公的支援の抜本的強化を図るべきだ」と迫りました。首相は、一部損壊世帯への支援を一定拡充すると表明したものの、公的支援の抜本的強化については答えませんでした。
「原発マネー」関電疑惑
政府の責任ただすも首相答えず
関西電力の幹部らが福井県高浜町の元助役(故人)から2011~17年に3・2億円分の金品を受け取っていた問題について、志位氏は、「事件の構図から『原発マネー』の還流であることは明らかだ」と述べ、安倍首相の認識をただしましたが、首相は答弁を避けました。
志位氏は「還流した金品の原資は、国民が支払ってきた電気料金だ」と強調。「関電は11年以降、原発再稼働のために家庭向け電気料金を2度にわたり値上げしたが、その一部が還流した」として、「再稼働を推進し、電気料金の値上げを認可してきた政府・経済産業省の監督責任が厳しく問われる」と追及しました。
さらに、「関電の会長も社長も金品をもらっていた当事者であり、関電のつくる第三者委員会まかせでは、肝心な真相が隠されてしまうことは避けられない。政府自らが徹底的な調査を行うべきだ」と指摘。「関電だけでなく、原発をもつ11の電力事業者は原発再稼働のための追加工事費として、5兆円を超える事業を発注している。『再稼働利権』が問われている」と力を込め、他の電力会社についても政府の責任で徹底調査を求めました。
首相は、「まずは第三者の目を入れて」などと関電まかせの答弁に終始。他社についても「経産省の指示を受けて電力会社による調査が行われた」と、政府の責任による全容解明に背を向けました。