2019年9月15日(日)
主張
米国境の壁建設費
「思いやり」で穴埋め許せない
米国防総省は、トランプ米大統領の最大の公約であるメキシコ国境沿いの壁を建設する費用として、米軍基地の施設建設予算36億ドル(3852億円、1ドル=107円で計算)を充てることを発表しています。この36億ドルの中には、4億568万ドル(約434億円)の在日米軍基地5カ所の予算も含まれます。国防総省は、壁の建設費に転用する予算を穴埋めするため、米軍基地を抱える同盟国に費用負担を求める考えを示しています。米国の同盟国の中でも異常に突出した日本の米軍駐留経費負担=「思いやり予算」などがさらに増額される恐れがあります。
在日米軍基地の予算転用
メキシコ国境沿いの壁の建設費に米軍基地の施設建設予算の転用を可能にしたのは、今年2月にトランプ大統領が署名した「国家非常事態宣言」です。これは、戦争や災害といった国の「非常事態」に際して大統領が出す宣言で、議会の承認を得ないで既存の予算を別の用途に振り向けることなどができるようになります。
壁の建設をめぐっては、来年の大統領選を前に実績を上げたいトランプ氏が強く求めていた予算を議会が認めませんでした。このため、トランプ氏は、不法移民の流入などを口実に「国家非常事態」を宣言し、国防総省や財務省の予算を使って壁の建設を強引に推し進めようとしています。
これを受け、米国防総省は今月初め、米国内外の米軍基地で計画している127の施設建設プロジェクトの予算計36億ドルを壁の建設費に転用することを明らかにしました。このうち約半分は国外にある米軍基地の施設建設予算です。
在日米軍基地では、▽横田基地(東京都)の輸送機の格納庫や整備施設など1億1882万ドル(約127億円)▽嘉手納基地(沖縄県)の特殊作戦部隊の整備用格納庫など8801万ドル(約94億円)▽岩国基地(山口県)の燃料桟橋など6400万ドル(約68億円)▽キャンプ・マクトリアス(沖縄県)の小学校9485万ドル(約101億円)▽横須賀基地(神奈川県)の高校4000万ドル(約43億円)―が対象となっています。
また、米領グアムでの施設建設予算2億5734万ドル(約275億円)も転用の対象になっています。このため、在沖縄米海兵隊のグアム移転計画に遅れが生じる可能性も指摘されています。
米国防総省のホフマン報道官は、転用される予算の補てんのため、「海外の建設プロジェクトの費用負担について同盟国や友好国と協議する」と述べ、肩代わりを求めています(3日の記者会見)。
まったく道理のない負担
安倍晋三政権は2019年度予算に、米軍駐留に関わる日本側負担として「思いやり予算」、「米軍再編経費」、「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費」合わせて3909億円を計上しています。この中には、米軍基地の施設建設費207億円や在沖縄米海兵隊のグアム移転費219億円が含まれます。これらは、在日米軍維持経費の米側負担を明記した日米地位協定にも違反するものです。
分断政策の象徴であり、米国でも強い反対がある壁の建設のため、日本国民の税金を使うことに何の道理もありません。米国の要求に応じ「思いやり予算」などを増額することは許されません。