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2019年9月11日(水)

主張

消費税増税目前

国民には「駆け込む」力もない

 安倍晋三政権が10月1日から強行を狙う消費税率の10%への引き上げまで、20日余りです。政府は、増税と同時に行う「複数税率」実施のためのレジ設置への補助やキャッシュレス決済のポイント還元のための中小業者の登録など、準備を進めています。しかし、増税に対する国民の反対の声はおさまりません。今回の増税前の目立った特徴の一つは、「駆け込み」需要が低調なことです。金額の張る自動車や住宅では目立った需要増がほとんどありません。その背景には勤労者の所得が低迷し、購買力が弱体化していることがあります。

小売販売8カ月連続減

 消費の弱さを示す指標の一つが、経済産業省が8月末発表した商業動態統計です。7月分の小売業販売額は、季節調整を行った指数で前月に比べ2・3%の減となりました。前年同月と比べると、昨年12月以来、8カ月連続のマイナスです。総務省の家計調査でも、7月の実質消費支出は、2カ月連続で減少しました。

 勤労者の所得の低迷は、厚生労働省の毎月勤労統計調査で浮き彫りになっています。事業所規模5人以上の企業の勤労者の7月の実質賃金は、前年に比べ0・9%低下し、今年に入って7カ月連続のマイナスです。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の下では、大企業や富裕層のふところが豊かになるだけで、勤労者の賃金は上がっていないことの表れです。

 資本金10億円以上の大企業の内部留保は2018年度末で449・1兆円にも積み上がっています(財務省の法人企業統計から)。アメリカの通信社ブルームバーグのデータによれば、日本の上場企業の手元現金だけでも、大半の国の国内総生産(GDP)を上回る506兆円にも上るといわれます。こうした手元現金は、今すぐにでも労働者の賃上げや設備投資に使えるものです。

 内閣府が9日発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)の改定値でも、消費の低調さや所得の低迷を改めて示しました。GDPの前期(1~3月期)に比べた実質の伸び率は0・3%と、8月に発表された速報値より0・1ポイント低下しました。個人消費の伸びは速報値と同じ前期比0・6%でしたが、民間住宅投資や民間企業の設備投資は下がりました。米中の貿易紛争の影響を受けた輸出も、不振が続きます。GDPの雇用者報酬には賃金だけでなく役員報酬も含まれます。それでも、その雇用者報酬の前期に比べた伸び率は実質0・7%という低さです。

 こうした中だからこそ、増税前の「駆け込み」需要も目立たないのです。日用品のトイレットペーパーや洗剤を買っても、ささやかな額です。消費者は住宅や自動車を買わないのではなく、買う力がないのが実態です。

政府は国会審議を行え

 安倍政権は、消費税の増税にあたって、経済の下振れリスクには躊躇(ちゅうちょ)なく対策をとるからと、増税を正当化します。しかし、そんな「対策」に巨費を投じるなら、増税そのものをやめればいいだけです。「複数税率」の導入やキャッシュレス決済のポイント還元は、消費者や中小企業の負担を軽くするものではありません。増税前に国会で審議を行い、増税の中止に追い込んでいくことが不可欠です。


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