2019年9月6日(金)
主張
北海道地震1年
住まい再建への支援を強めよ
北海道で観測史上初めて最大震度7を記録し、災害関連死を含め44人が犠牲になった北海道胆振(いぶり)東部地震からきょうで1年です。強烈な揺れは、多数の家屋を損壊させ、大規模な土砂崩れによる被害を生みました。道内ほぼ全域が停電する全国で初めてのブラックアウトが2日間続くという、未曽有の事態を引き起こしました。
震源上に位置し、大きな被害を出した厚真(あつま)、むかわ、安平(あびら)3町では約200世帯が応急仮設住宅で暮らしています。被災者の暮らしを支えるきめ細かな施策を続けるとともに、住宅再建への支援を強めることが重要になっています。
きめ細かな対応が必要
避難生活の中で、体調を崩す人も少なくありません。持病のある被災者が、移り住んだ仮設住宅で亡くなる痛ましい事態もありました。応急仮設の住環境の改善をすすめることが大切です。見守りなどの体制強化も欠かせません。医療費の減免は打ち切るのでなく、継続することが必要です。
住宅被害は、全壊479棟、半壊1736棟、一部損壊2万2741棟にのぼります。宅地では地盤の亀裂や陥没などが発生したほか、液状化被害も起きました。
震度7に襲われた厚真町は約9千年前の近隣の火山噴火によって火山灰が堆積している地域でもあり、被害は広範囲におよびました。住宅再建を望む住民の会が結成され、「ゆがんだ地盤の改良と家のゆがみを直すのに数百万円もかかる」という声を上げています。
厚真、むかわ、安平3町は、財政支援、使途制限のない「復興基金」の創設、職員不足への人的支援を求めています。規模の大きな被害に対応するには地元自治体の力だけでは困難です。政府は住民と自治体の切実な願いに正面からこたえるべきです。
急がれるのは、住宅支援です。住まいの再建をすすめることは、被災者の暮らしの安定を確保するうえで重要であるだけでなく、人口流出を防ぎ、地域全体を復興させるうえでも不可欠の課題です。
ところが、現行の被災者生活再建支援法では支援の対象が全壊か大規模半壊に限られ、半壊や一部損壊には適用されません。液状化被害に見舞われた札幌市清田区などでは、傾いてこのままでは住めない家が多くあります。しかし、建物が残っているからと一部損壊扱いにされ、支援金を受け取れないケースが相次いでいます。支援金額も1世帯で300万円にとどまり、現状に見合っていません。支援金の上限を当面500万円に増額するとともに、対象を半壊などに早急に広げるべきです。
地域分散型電力供給に
北海道電力管内の島部をのぞく約295万戸が停電したブラックアウトは、電力供給の半分を担う苫東厚真火力発電所が揺れの被害を受け停止したことがきっかけでした。一つの大規模発電所に頼ることの危険性を、まざまざと示しました。
地震をはじめ災害からのリスクを避けるためには、地域分散型の電力供給体制へと転換することが求められます。泊原発の再稼働を最優先し、電力融通の強化などを遅らせてきた北海道電力の姿勢は重大です。地震が多発する日本で、原発推進から再生可能エネルギーの拡大に政策転換をすることは、いよいよ急務です。