2019年8月31日(土)
主張
軍事費概算要求
米戦略追従の異常軍拡やめよ
防衛省が2020年度軍事費(防衛関係費)の概算要求を決定しました。総額は、19年度当初予算と比べ、648億円(1・2%)増の5兆3223億円に上り、過去最大です。同省は、今回の概算要求について「格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化」するためとしています。自衛隊を米軍と肩を並べて「海外で戦争する軍隊」につくり変える動きを一気に加速しようとする極めて危険な狙いです。
「いずも」を攻撃空母に
12年末に発足した今の安倍政権は、それまで微減傾向にあった軍事費を拡大の方向にかじを切りました。13年度から19年度まで7年連続で軍事費を増やし、15年度から19年度まで5年連続で過去最高額を更新してきました。
今回の概算要求で米軍再編関係経費などは金額を示さない「事項要求」になっており、これらを加えると総額はさらに膨らみます。安倍政権が年末に決定する20年度当初予算案の軍事費が、19年度の5兆2574億円を大きく上回るのは間違いありません。
要求の内容も、憲法違反の安保法制=戦争法、日米軍事協力の指針(ガイドライン)の具体化を急ピッチで進めようとするもので非常に重大です。
海上自衛隊の護衛艦「いずも」を、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機のF35B戦闘機が発着艦できる空母に改修する経費31億円を初めて計上しました。併せてF35Bを6機取得する経費846億円も初めて盛り込みました。
F35Bを運用するための「いずも」の空母化は他国領土への攻撃を可能にするもので、歴代政府が憲法上許されないとしてきた「攻撃型空母」の保有に他なりません。しかも、安保法制に基づき、海外の紛争である「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」で、米軍のF35Bが、空母化された「いずも」を戦闘作戦行動の発進拠点にして、他国領土を実際に攻撃することもできるようになります。
他国領土の攻撃を可能にする兵器の導入は、これにとどまりません。今回の概算要求では、F35A戦闘機3機の追加取得費310億円とともに、同機に搭載する長距離巡航ミサイル「JSM」を引き続き調達するための経費102億円を求めています。戦闘機の航続距離を伸ばす新型空中給油機KC46Aを新たに4機導入する経費1121億円も要求しています。
宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域と陸海空の能力を融合させた「領域横断作戦」の態勢強化のため、航空自衛隊に「宇宙作戦隊」、陸上自衛隊に「サイバー防護隊」や新たな電子戦部隊などの創設を計画していることも看過できません。
「陸上イージス」も計上
F35AやF35B戦闘機、KC46A空中給油機などは、トランプ米政権が大量購入を繰り返し迫っている米国製兵器です。米国製の陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」も配備候補地で反対の声が高まっているにもかかわらず、ミサイル垂直発射装置の取得など関連経費122億円を盛り込んだのは大問題です。
米国の軍事戦略に追従し、過去最大の軍事費を投じて日米軍事同盟の拡大・強化にひた走る道から今こそ抜け出すことが必要です。