2019年8月27日(火)
主張
消費税10%が目前
不況進む中での増税は中止を
安倍晋三政権が10月1日から強行を狙う消費税の税率10%への引き上げまで、あと1カ月余となりました。
政府は新聞の全面広告を使って、増税実施に向けた宣伝に躍起です。しかし、国民の不安と懸念は全く払しょくされていません。経済情勢は、8月上旬に発表された今年4~6月期の国内総生産(GDP)が、低い伸びにとどまったことなどにも示されるように、いよいよ悪化が鮮明です。米中貿易紛争の激化で、国際経済の先行きも不透明です。こうした中での増税強行は許されません。
国内外の経済は深刻
消費税は1989年4月に税率3%で導入され、その後の30年間に、5%、8%と増税が繰り返されてきました。原則としてあらゆる商品やサービスに課税される、低所得者ほど負担が重い逆進的な税金です。10%への引き上げは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」がもたらした貧困と格差を一層拡大させる道です。
消費税の増税による家計や中小業者の負担増は、消費や景気を冷え込ませます。実際、2014年4月に安倍政権が消費税率を8%に引き上げてから、長期にわたって消費の低迷が続いています。
とりわけ深刻なのは、安倍首相の政権復帰以来、「戦後最長の景気拡大」といくら宣伝しても、経済情勢が昨年末以来、消費の不振に加えて、国際経済の悪化が顕著になり、ますます不況色を強めていることです。
国際経済は、米中貿易紛争がエスカレートする中で、下振れリスクを警告する声が相次いでいます。米国のサマーズ元財務長官も09年の「金融危機以来もっとも危険な瞬間かもしれない」と言います。こうした中での消費税の増税は、世界経済にとっても日本経済にとっても無謀です。
消費税を導入した時も、増税した時も、こんなにひどい経済状況ではありませんでした。安倍政権は15年10月に予定した10%への引き上げを2回にわたって延期した時、日本経済や世界経済の悪化を理由にしましたが、今はそれ以上に深刻です。
消費税の増税が、参院選で「信任を得た」という安倍首相の言い分は通用しません。確かに政権与党の自民党や公明党は参院選で、10月からの増税実施を公約に掲げました。しかし参院選の結果は、自民党が改選時より9議席も減らし、投票日のマスメディアの「出口調査」でも、参院選後の世論調査でも、増税に「反対」が多数です。「読売」26日付の調査でも、「反対」が49%です。増税強行に全く道理はありません。
このままでは混乱必至
安倍政権は、消費税率の10%への引き上げに対して「万全の対策」をとると言い張り、キャッシュレス取引でのポイント還元やプレミアム付き商品券の発行、景気の下振れリスクには「躊躇(ちゅうちょ)することなく」対策をとるといいます。しかし、制度を複雑にするだけで、効果が薄い対策に巨費を投じるぐらいなら、増税をやめるべきです。
ポイント還元に必要な中小商店の登録申請は、まだ対象業者の約2割です。これで1カ月後に増税を強行すれば、混乱の拡大は必至です。増税前に国会での十分な議論もなく、増税を強行する安倍政権の姿勢は全くの暴走です。