2019年8月22日(木)
シリーズ共闘の力(3)
共通政策 進化へ
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「『原発ゼロ』に本気で向き合う公約にできた。昨年の県知事選で、そこを明確にできなかったことは敗因の一つでもあり、強く意識した」。新潟で政策協定のとりまとめに尽力した「市民連合@新潟」共同代表の佐々木寛さん(新潟国際情報大教授)は語ります。新潟は世界最大級の原子力発電所・東京電力柏崎刈羽原発の立地県です。
本気の原発ゼロ
打越さく良・野党統一候補と市民連合・野党間で交わされた政策協定では、「柏崎刈羽原発の再稼働は認められる現状にありません」と明記。「新潟には再生可能エネルギーの生産に好適な条件が多くあります。第1次産業と再生可能エネルギーの融合によって、エネルギーの地産地消、さらには地域でお金が回る『地域分散型ネットワーク社会』の実現を目指します」など、「本気の“原発ゼロ” に向き合う」として詳細な政策内容が盛り込まれました。
新潟の政策協定全体は原発問題にとどまらず、実に5本柱・41項目に及びます。野党代表と13項目の共通政策(5月29日に合意)をまとめつつあった東京の「市民連合」(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)の関係者とも意見交換しながら、県独自の課題や蓄積を考慮して練り上げられました。
佐々木氏は、格差対策や地域経済の活性化にも力を入れたとし、「アベノミクスは結局、一部の人たちのための政治だったということが説得力をもって響いた。『忖度政治(そんたくせいじ)』を超えて、一人ひとりの有権者のための政治をつくろうという訴えが、いろんな争点と結びつき、構造的に安倍政権に対する矛盾と不満が表出した」と手ごたえを語ります。
県民の声集める
新潟では、市民連合が「1万人の声プロジェクト」として県民の生きた声を集める取り組みも進められました。クリスマスや成人式に街頭で声を聴き、ポストイット(付箋紙)に集めていきました。「そういう積み上げが説得力となり、各党も、市民連合の原案をベースに共通政策を調整する形になっていった。市民連合も成長・進化し、自信と経験を積んだ」と佐々木氏は語ります。
地方・地域が政策面でも主体的な力を強くすることは共闘の重要な課題です。32の1人区の20以上で政策協定は結ばれました。新潟では地域の重要課題を盛り込む一方、きめ細かい政策をつくりあげました。
また、新潟の政策協定では、「外交と防衛の未来像」にも言及。政党本部間と東京の市民連合との共通政策で掲げられた沖縄の米軍新基地建設について「強行に強く反対」と明記。核兵器禁止条約の批准を独自に盛り込みました。
佐々木氏は「外交・安保の問題は、本当に政権を取るときには、一番重要になってくる。新潟という地域としては拉致問題もあり、どうやって東アジアの外交をつくるかが重要になる。そこは必ずしも今回の争点にはならなかったが、それらの問題も議論し盛り込んだことで、今後につながる外交安保論の基盤、萌芽(ほうが)もつくれた」と述べます。
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沖縄のたたかいと結合
13項目・共通政策合意は、安保法制=戦争法廃止をはじめ、安倍改憲阻止、沖縄米軍新基地建設中止、消費税10%増税反対、原発ゼロなど国政の基本問題で、安倍政権に対する明確な対抗軸を示す画期的なものとなりました。
特に、沖縄の米軍新基地建設中止が明確に入ったことで、共闘の源流であるオール沖縄のたたかいと市民と野党の共闘が、ダイナミックに結合しました。
沖縄県前名護市長の稲嶺進さんは「共通政策」の合意に際し、「野党統一候補の勝利は、沖縄の民意が全国の民意になることを意味し、新基地建設中止と安倍政権打倒の実現に向けた力強い大きな一歩になります」と歓迎のメッセージを寄せました。
共通政策の合意に至るプロセスでは「市民連合」(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)が大きな役割を果たしました。
市民連合を構成する総がかり行動実行委員会・共同代表の小田川義和さんは「政策協定13項目をまとめていく過程で、一定期間、政党に持ち帰ってもらい、政党同士の間でも議論してもらう時間もあり、市民連合と各政党間でキャッチボールしながらまとめてきた経過があるのは率直な事実」と語ります。16年、17年の段階にはなかった発展です。加えて小田川氏は「憲法、消費税、原発、よく合意したと思っている。この線でまとまれば、次の連立政権の議論も夢ではないと市民は思っている」と述べます。
同じく「総がかり行動」共同代表の高田健さんは「19年の政策協定の16年との大きな違いは、憲法、安保法制、平和の問題での発展に加え、生活の問題、ジェンダーの問題、若者たちの仕事の問題にまで踏み込んでいったこと。これは誰かが頭の中で考え出して並べたものではなく、運動の中から要求されて生み出されてきた。この点では、農業政策や中小企業政策などはまだ入っておらず、運動そのものの幅も含めてまだ不十分なところもあるものの、大きな飛躍があった」と語ります。
市民連合と5野党・会派の「共通政策」
だれもが自分らしく暮らせる明日へ
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合と5野党・会派の党首が5月29日に合意した「共通政策」は次の通りです。
(1)安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと。
(2)安保法制、共謀罪法など安倍政権が成立させた立憲主義に反する諸法律を廃止すること。
(3)膨張する防衛予算、防衛装備について憲法9条の理念に照らして精査し、国民生活の安全という観点から他の政策の財源に振り向けること。
(4)沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行うこと。さらに、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進めること。日米地位協定を改定し、沖縄県民の人権を守ること。また、国の補助金を使った沖縄県下の自治体に対する操作、分断を止めること。
(5)東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開すること。
(6)福島第一原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと。
(7)毎月勤労統計調査の虚偽など、行政における情報の操作、捏造(ねつぞう)の全体像を究明するとともに、高度プロフェッショナル制度など虚偽のデータに基づいて作られた法律を廃止すること。
(8)2019年10月に予定されている消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化を図ること。
(9)この国のすべての子ども、若者が、健やかに育ち、学び、働くことを可能とするための保育、教育、雇用に関する予算を飛躍的に拡充すること。
(10)地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金「1500円」を目指し、8時間働けば暮らせる働くルールを実現し、生活を底上げする経済、社会保障政策を確立し、貧困・格差を解消すること。また、これから家族を形成しようとする若い人々が安心して生活できるように公営住宅を拡充すること。
(11)LGBTsに対する差別解消施策、女性に対する雇用差別や賃金格差を撤廃し、選択的夫婦別姓や議員間男女同数化(パリテ)を実現すること。
(12)森友学園・加計学園及び南スーダン日報隠蔽(いんぺい)の疑惑を徹底究明し、透明性が高く公平な行政を確立すること。幹部公務員の人事に対する内閣の関与の仕方を点検し、内閣人事局の在り方を再検討すること。
(13)国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること。