しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年8月15日(木)

安保法制下の陸自南スーダンPKO

駆け付け警護で「即応態勢」

殺傷能力強化へ 狙撃銃導入も

本紙請求で判明

 安保法制=戦争法に基づく新任務「駆け付け警護」と「宿営地共同防護」を付与され、戦後最も、海外で“殺し・殺される”危険が強かった陸上自衛隊の南スーダンPKO(国連平和維持活動)第11次派兵部隊(2016年12月~17年5月)の活動の一端が、本紙が防衛省への情報公開請求で入手した報告書から初めて明らかになりました。


写真

(写真)南スーダンでの「駆け付け警護」訓練を公開する陸上自衛隊=2016年10月24日、岩手県滝沢市の岩手山演習場

 「駆け付け警護」は、海外派兵での武器使用基準を「正当防衛」型から「任務遂行」型に拡大し、邦人や国連関係者などが襲撃を受けた際、武器を使用して敵対勢力を排除するもの。今回、開示された第11次隊の「成果報告」(17年5月23日付)は、「いつ(任務が)付与されても、即応し適格に対処し得るよう…トンピン(宿営地)外で活動する警備小隊には駆け付け警護のための資機材を携行…即応態勢を維持・確立した」と明記。16年7月に政府軍・反政府軍による大規模な戦闘が発生した首都ジュバの市街地で「即応態勢」が取られていました。任務遂行のため、ジュバ市内で「経路偵察」も行われていました。

 また、今後の教訓として「狙撃銃導入の必要性・可否を検討」するよう提言。安保法制のもと、今後の海外派兵部隊にスナイパー(狙撃手)を配置し、殺傷能力を高める危険があります。

 さらに、新任務に伴い、戦場で隊員同士が応急処置を行う「第一線救護」の強化を強調。モルヒネなど医療用麻薬が初めて携行されたことも記されていました。

 他国軍と共同している宿営地が襲撃された際、担当区域以外の防護も行う「宿営地共同防護」に関しては、陸自研究本部作成の『教訓要報』(17年11月2日付)に、政府軍と反政府軍との「衝突」のような事態で「いかに対応すべきか」をUNMISS(国連南スーダン派遣団)と調整していたと明記。政府軍・反政府軍の戦闘では、自衛隊を含むPKO部隊の宿営地をはさんで戦闘が行われ、国連施設が政府軍に襲撃されました。

 仮に自衛隊が政府軍・反政府軍のいずれかと交戦した場合、憲法9条違反の「海外での武力行使」に該当します。安倍晋三首相は16年12月7日の党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長に対し、「政府軍と自衛隊が干戈(かんか=戦火)を交えることにはならない」と明言しましたが、現場では、対処に苦慮していたとみられます。

 陸自の南スーダンPKO派兵は12年1月から開始され、首都ジュバを中心に施設建設や道路整備などを行いました。17年5月の第11次隊撤収まで継続。現在は司令部要員だけが残っています。


pageup