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2019年8月7日(水)

首相は禁止条約署名を

広島の被爆7団体代表、迫る

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(写真)被爆者7団体の代表(手前の列)と懇談する安倍晋三首相(左端)=6日、広島市

 広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長ら7団体の代表は6日、被爆者代表として、広島入りした安倍首相にたいし、「具体的進展のない、核兵器保有国と非保有国との橋渡しという立場を離れ、核兵器禁止条約を支持し推進する立場にたってください」などと書かれた要望書を手渡しました。

 佐久間理事長は「唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に署名し、核兵器廃絶のために努力してほしい」と語気を強めて訴え。被爆者認定制度の改善や被爆者健康手帳の交付を求める「黒い雨」被害者の救済も求めました。

 安倍首相は、「核兵器国と非核兵器国の橋渡しをする」との従来の立場を繰り返すだけでした。

 被爆7団体の総意として広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長は「爆心地から1・7キロで被爆し、目がくらむような閃光(せんこう)と熱線で気絶した。背中、右足、両腕をやけどし、そのあとはケロイドとなって残っている。家族の懸命な看護で一命を取りとめた」と自らの被爆体験を語りました。

 「核兵器禁止条約が採択され、核兵器廃絶に大きな一歩となり、私たちの希望です。ところが、日本政府は核保有国とともに、条約に反対し続けている。『どこの国の政府なのか』と怒りでいっぱいです。この態度を改め、禁止条約に署名・批准を強く求めます」と結びました。

実現には政権交代が急務

 「唯一の被爆国でありながら、日本政府は核兵器禁止条約に反対する。どこの国の政府なのか。被爆者をはじめ日本国民の共通の思いであり、怒りです」。6日、広島市内での安倍晋三首相との懇談で、被爆者から発せられた言葉です。核兵器禁止条約の採択から2年が経過した今なお、署名を拒む政府への失望と怒りが広がっています。

 「核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めてほしい」。平和記念式典で松井一実広島市長がこう訴えましたが、首相は同式典のあいさつで、昨年・一昨年に続いて同条約に全く言及しませんでした。

 それどころか、被爆者との懇談で安倍首相は、核禁条約が目指す「核廃絶という目標は共有しているが、アプローチは異なる」と発言。条約署名を否定する立場を明確に示し、被爆者の願いを踏みにじりました。

 安倍首相は式典で、「重要なのは核兵器国と非核兵器国との橋渡しだ」と述べ、「国際社会の取り組みを主導する」と語りました。しかし、核兵器禁止条約の署名・批准国が増えていく一方、トランプ米政権はイランとの核合意やロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を一方的に離脱し、核軍拡競争に火をつけています。「橋渡し」路線の破綻は誰の目にも明らかであり、「核兵器のない世界」の実現を「主導」することは不可能です。

 安倍首相は米国に核軍縮を促すどころか、新たな核軍拡競争の火種となるINF条約失効をめぐり、「米国の問題意識は理解できる」とトランプ大統領を擁護しています。広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長は、「首相の言う『橋渡し』はごまかしだ。米国の核に頼り、追従しているだけ」と批判しました。

 そもそも安倍首相は、潜水艦に搭載する核弾頭の小型化など「使える核」開発を目指すトランプ政権の「核態勢の見直し」(NPR)を支持しています。「『核兵器のない世界』を実現する」と口にしますが、本音は米国の「核の傘」を維持し、核保有国とともに核兵器を存続させることです。

 核兵器廃絶という国民の悲願に背を向ける政府に代わって、核兵器禁止条約に署名する政府を実現することが急務です。被爆75年である来年に予定しているニューヨークでの原水爆禁止世界大会を成功させ、核固執勢力を追い詰める世論を広げることが求められています。

 (斎藤和紀)


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