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2019年8月3日(土)

幼児向け図鑑「はたらくくるま」

開いて驚き 兵器ずらり

 「えっ、兵器がずらり」―。自衛隊の戦車や戦闘機などの写真を掲載した幼児向け知育図鑑『はじめてのはたらくくるま 英語つき』について、大手出版社・講談社の子会社「講談社ビーシー」は2日までに「適切な表現や情報ではない箇所があった」として今後増刷しないとしました。この本をめぐっては、児童文学関係者や新日本婦人の会などが同社に懸念を伝えていました。(取材班)

講談社ビーシー 増刷せず

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(写真)「はたらくくるま」として掲載された自衛隊の戦闘機、護衛艦など

 同書は、3~6歳の幼児を対象とし、昨年11月に講談社が発行。全30ページのうち6ページにわたり自衛隊車両などを紹介。陸上自衛隊の戦車や装甲車、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を搭載した車両だけでなく、“車”ではない航空自衛隊のF35A戦闘機、海上自衛隊のイージス艦まで掲載しています。

 こうした内容に、日本子どもの本研究会や親子読書地域文庫全国連絡会、日本児童文学者協会が、幼児向けの本であることを念頭に「戦争に使う乗り物を普通の車と同列にとらえられることに大きな不安」などと意見を表明していました。

 講談社ビーシーは7月22日、自社のウェブサイトで、今後は増刷しないと発表しました。本紙の取材に講談社ビーシーの担当者は戦闘機を掲載したことについて「さまざまな乗り物を子どもたちに見せたかった。政治的な理由はまったくない」と説明。「幼児向けの知育図鑑に自衛隊の装備を掲載するのであれば適切な方法があった。今回の形は不適切だった」と答えました。

 同社と懇談した新日本婦人の会は「店頭では本が帯封され中身が見えません。孫のために買ったら驚いたという声も届きました」といいます。同社に「戦争や軍事攻撃は、破壊や人が死ぬことにつながる。それを前提とした乗り物を町で見かける『はたらくくるま』として紹介していることにとても違和感がある」と伝えました。増刷中止に対し「当然のことです。幼児向けの図鑑にF35A戦闘機や地対空誘導弾PAC3、イージス艦など現在問題となって議論されているものをちゅうちょなく掲載することには驚きでした」。

 「子どもの本・九条の会」も同社と懇談しました。会報で「“戦争の道具である兵器は載せない”が、児童書出版の常識であったはず」と訴えます。

 同会はこう警鐘をならします。「子どもの本の中に、戦車などの兵器がなぜ“はたらくくるま”のなかまとしてあるのか。幼児向けの図鑑にこれまではなかったことです。こういったものが子ども文化や教育の中に受け入れやすい形でじわじわと知らないうちに入ってくることに警戒感を感じます。鈍感であってはいけません」

本質的に違う

緒方蘭弁護士の話

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 幼児向けの本に「はたらくくるま」として掲載するのは、本来、救急車やブルドーザーなど私たちの暮らしを助ける身近なものであり、戦車や戦闘機など人を傷つける兵器を掲載することは本質的に違います。

 そもそも憲法9条2項から、日本が攻撃能力を有する兵器を保持することに疑義があります。最近の自衛隊は、「必要最小限度の実力組織」という政府解釈すら捨てて、他国を攻撃する兵器を保有し、アメリカから高額兵器を「爆買い」するなど変容しています。

 幼児向けの本に兵器を載せることは、子どもが人を傷つけることを身近に感じてしまうだけでなく、9条改憲や自衛隊の変容を受け入れ、自衛隊を海外で戦争する軍隊に変質させる世論づくりを後押しさせるものにもなります。そのような流れに対して毅然(きぜん)と「掲載をやめてください」と声をあげることは必要なことです。


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