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2019年7月29日(月)

自衛隊日報「3件だけ」

防衛省“調査”に与野党から批判

本紙の開示請求には「9件」

 2015年9月の安保法制成立以後、陸上自衛隊が海外で行った共同訓練の「日報」をめぐり、防衛省は通常国会会期末の6月26日、衆院外務委員会理事会に「調査結果」を提出しましたが、本紙の情報公開請求に対して、9件の日報を開示決定しながら、「作成した日報は3件だけ」という当初からの結論を変えませんでした。不可解な結果に与野党理事から批判の声が相次ぎ、南スーダン、イラク派兵日報の隠蔽(いんぺい)に続き、防衛省の公文書管理のあり方に重大な課題を残しました。


写真

(写真)2017年度に陸自が米国で米陸軍と行った実動訓練(ライジングサンダー17)の日報。防衛省は本紙の開示請求で一部を開示

穀田質問が発端

 この問題は、日本共産党の穀田恵二衆院議員が、15年10月~18年3月にかけて行われた陸自の海外での共同訓練の日報を含む定時報告の提出を求めたことが発端です。

 これに対して防衛省は今年3月から4月にかけて、対象となる共同訓練が30件あり、日報が作成されたのは3件のみだったと説明。3月13日の衆院外務委員会で穀田氏が「では、なぜ3件の日報が作成されたのか」と指摘したのに対し、「共同訓練で日報を作成することは一般的ではない」(原田憲治防衛副大臣)との説明に終始しました。

 穀田氏は、16年秋に行われた日米共同統合実動演習「キーン・ソード」の実施計画に「定時報告」の作成を指示する記載があることを指摘(4月3日、衆院外務委員会)。「共同訓練で日報を作成することは一般的ではない」という説明との矛盾を明らかにしました。

 さらに、本紙が16年度から18年度にかけて陸自が参加した共同訓練のうち15件を抽出して日報の開示請求を行ったところ、9件の開示が決定されました。うち6件は穀田氏が提出を要求した期間に含まれており、「3件のみ」という説明とは明らかに矛盾します。

 このように、「作成された日報は3件だけ」という防衛省の見解の信ぴょう性が突き崩されていったのです。

実態を把握せず

 ところが防衛省が6月26日に提出した「調査結果」は、日報の作成が確認された件数は当初とまったく同じ「3件」だと報告しました。日報の作成は一般的ではなく、これら3件は「訓練部隊指揮官の判断で作成・報告された」ものであり、あくまで“自発的”に作成されたとしています。

 さらに、穀田氏に提出した日報は(1)「参加部隊が自らの上級部隊(司令部など)に対して定期的に報告したもの」に限られ、(2)「自らが所属する部隊(連隊、大隊等)に報告した文書は含まない」という条件がついていた一方、本紙の開示請求にはそのような条件がついていなかったため、より多くの日報が出てきたというのです。防衛省は、自衛隊における上級部隊への日報作成の実態を把握していなかったと弁明しています。

 では、実施計画で「定時報告」の提出が求められていた「キーン・ソード」はどうなのか。これに関しては、「同行する統合幕僚監部の要員…がメールを用いて定時報告を行った」ことを確認したとしています。しかし、この定時報告は「陸自部隊が作成したものではない」から「今回の調査対象に該当しない」と断定。しかも、「保存期間1年未満」が過ぎたため、既に廃棄したとしています。

 防衛省のこうした不可解な説明に対して、6月26日の衆院外務委員会理事会では、「自衛隊のような実力組織で、命令に基づかず、指揮官の判断で日報が作成されることがあるのか」「保存期間が終了したとして廃棄したり、上級部隊以外への日報作成の実態を初めて把握したと言うが、それ自体が問題だ」など、与野党を超えて批判の声が相次ぎました。

 穀田氏は「安保法制の成立以後、変貌する海外訓練の実態を把握できないのは文民統制の観点からも問題。行政文書として日報の扱いを抜本的に見直すべきだ」と求めました。

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