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2019年7月26日(金)

知りたい聞きたい

大企業の役員報酬なぜ最高?

最高益 株主配当増やし…

  大企業の役員報酬がなぜ最高になったのですか? そもそも役員報酬って何でしょうか?(I・S)

  2019年3月期(18年度)決算の上場企業で1億円以上の報酬を得た役員は276社、567人、合計額1176億9500万円でした。開示企業数、人数、合計額とも、10年3月期に開示が義務づけられてから最高となりました。17年度、大企業の利益は軒並み過去最高でした。最高益を受けて株主配当を増やしたことを株主に評価され、役員報酬が一段と増えました。

 役員が技術革新や新しい事業で成果をあげ、企業や社会に貢献して適正な報酬をもらうなら理解できますが、法外な金額の役員報酬が増えています。19年3月期の個人別最高額はソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長の32億6600万円でした。同氏は18年3月期も20億1500万円を受け取っていました。

 役員報酬には固定報酬、業績連動報酬、退職金などが含まれます。現金だけでなくストックオプションという株式による報酬もあります。自社の株をあらかじめ定められた価格で購入できる権利です。株価が上昇した時点でその権利を行使すれば差額がもうかるので、役員は株価を上げるために働くようになります。

 役員報酬の金額や算定方法、金銭以外の内容は会社の定款または株主総会の決議で定めることになっています(会社法第361条)。取締役など企業役員は株式会社の場合、株主に責任を負うことが会社法で定められています。役員報酬を決める際にも、株主にどれだけ貢献したかが評価の基準となります。

 株主総会では大株主ほど強い発言力を持つので、役員は株主配当をいかに増やすか、株価をいかに上げるかに必死になります。株価を上げるため、コスト削減や人件費カットで利益をかさ上げする経営が問題になっています。

 社外取締役が役員報酬を決める「報酬委員会」の設置はすべての会社に義務付けられているわけではありません。日産自動車の場合、ゴーン元会長の報酬は事実上、自分で決める“お手盛り”でした。ゴーン被告も「コストカッター」を売り物にした経営者でした。

 個々の役員にいくらの報酬を払ったかについて、以前は開示義務がありませんでしたが、10年3月期から1億円以上の報酬を受け取った役員について名前、金額などを有価証券報告書で開示することが義務づけられるようになりました。

 高額な役員報酬が増える一方、大企業は従業員の賃上げに消極的です。役員報酬と労働者の賃金の格差が拡大しています。

 (2019・7・26)


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