2019年6月20日(木)
主張
日米の貿易交渉
“密約”疑惑はいよいよ深まる
日本とアメリカの貿易協定交渉の閣僚級会合が先週末開かれました。今月下旬、大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて開催される日米首脳会談前に再度会合を持ち、7月の参院選後に早期の「成果」発表を目指すと再確認しました。
アメリカのトランプ大統領は11日の農業州アイオワ州での演説で、「日本が間もなく、(農産物を)たくさん買ってくれるようになる」と公言しています。5月末、安倍晋三首相と会談したトランプ氏は会談後、「8月に良い発表ができると思う」と発言しました。“密約”の疑いは、深まるばかりです。
「もともと一致している」
日米の貿易協定交渉は、昨年9月の日米首脳会談で、協議に入ることが合意されました。日本やアメリカなど12カ国で合意していた環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱したトランプ政権が、日本に2国間交渉を迫り、その圧力に安倍政権が屈したものです。安倍政権は「物品貿易協定(TAG)」交渉だとごまかしますが、実体は、物品だけでなくサービスなども含む、「自由貿易協定(FTA)」の交渉に他なりません。
先週末、ワシントンで開催された茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表の会談の後、茂木氏は記者会見で、「参院選後に早期に成果を挙げたいということではもともと一致している」と説明しました。次回会合では、首脳会談に向け、「交渉の進展を確認する場になる」と述べています。
日米の貿易協定交渉は、5月にトランプ氏が「8月には良い発表ができると思う」と発言した時から、“密約”の存在が、指摘されてきました。参院選が終わるまでは“だんまり”を決め込み、その後にトランプ氏が大統領選で有利になるよう、日本が輸入拡大で大幅に譲歩する「合意」を発表するのではないか、というものです。
とりわけ、トランプ政権が関心を寄せているのは、米国製兵器の輸出や、カジノ企業の進出とともに、農産物の輸出拡大です。アメリカの農畜産物の対日輸出は、アメリカを除く11カ国のTPP11や日欧EPA(経済連携協定)が発効したため、オーストラリアやニュージーランド、EUに比べ不利になっています。アメリカ国内では、不満が噴出しています。
トランプ氏が、アイオワ州での演説で、「日本はこの間、『米国の農家からたくさん買う』と言ってくれた」「まもなく、たくさん買ってくれるようになる」と発言したことは、“密約”の存在を強く疑わせます。
茂木氏は先の記者会見で、参院選後に「成果」を表明する時期などについては「頭の体操」をしていると述べました。政治日程をにらんで、大幅譲歩の「合意」を発表する可能性を示唆したものです。
危険な交渉中止せよ
TPPは、経済大国や多国籍企業に有利な貿易や投資のルールづくりです。トランプ政権が一方的に離脱したのは、2国間交渉で自国により有利な譲歩を引き出すためです。トランプ氏は5月の首脳会談後の記者会見で、「TPPの水準には縛られない」とまで発言しています。
“密約”の疑いが濃い日米交渉を直ちに中止し、日本の経済・食料主権を守る公平・公正な貿易ルールづくりを目指すべきです。