2019年6月15日(土)
主張
防衛省ずさん説明
事実ゆがめた計画推進やめよ
陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の陸上自衛隊新屋演習場への配備計画をめぐって、防衛省が地元自治体の秋田県と秋田市に示した説明資料が誤ったデータに基づき作成されていたことが判明し、大問題になっています。沖縄県でも、名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、岩屋毅防衛相が埋め立て用土砂の新たな陸揚げについて事実と異なる説明をしたことに反発が広がっています。自らの計画を実現するためには、事実までゆがめようとするのか。住民や自治体を愚弄(ぐろう)する結論ありきの姿勢が、こうした批判を浴びているのは当然です。
調査の信頼性崩れた
イージス・アショアの配備問題で、防衛省が5月27日に秋田県と秋田市に示した説明資料は、「適地」とする新屋演習場以外に、青森、秋田、山形3県の国有地19カ所を、レーダーに対する遮蔽(しゃへい)、インフラの状況などの点から調査し、全てが「不適」だったとしていました。このうち9カ所は、レーダーを遮る山があるとの理由で、まずはじめに除外されていました。
ところが、これら9カ所全てで山頂を見上げる角度を実際よりも大きく記載していたことが明らかになりました。防衛省がデータを修正した結果、「(9カ所のうち)4カ所については遮蔽の角度だけでは配備候補地になり得ないという判断ができなくなった」(岩屋氏、今月7日)のです。
防衛省は、遮蔽の角度を割り出すのに地図ソフト「グーグル・アース」を使い、その際、標高と水平距離の縮尺が違うことに気付かないで計算してしまったといいます。あまりにずさんなミスです。
防衛省がミスを謝罪した住民説明会(8日)で同省の職員が居眠りをしていたことも、怒りを一層かきたてています。同省は、遮蔽の角度では「不適」と言えなくなった4カ所も「インフラや機能・役割の観点から配備候補地にはなり得ない」(岩屋氏、7日)とし、あくまで新屋演習場に配備する姿勢です。しかし、調査の信頼性が根底から崩れている下で、こんな言い分はとても通りません。
岩屋氏は、辺野古新基地建設に伴う埋め立て工事でも、事実を隠して新たな土砂の陸揚げを正当化しています。
防衛省は11日、「K8」と呼ばれる護岸で新たに土砂の搬入を始めました。岩屋氏は県に提出した埋め立て承認願書に記載した「設計の概要」では「具体的な陸揚げ場所は特に限定されているわけではない」とし、K8護岸での土砂搬入は「問題がない」と述べていました(7日)。しかし、工事の詳細を示すため同願書に添付した「設計概要説明書」には、K8護岸ではなく、いまだ造られていない「中仕切岸壁」から土砂を搬入すると明記されています。
願書の内容と異なる工事を行う場合は県の承認を改めて得る必要があるのに、これを無視して土砂搬入を強行するため、岩屋氏が事実をねじ曲げたのは明らかです。
安倍強権政治の表れ
こうした防衛省の態度には、安倍晋三政権の強権政治が背景にあります。イージス・アショアも、辺野古新基地も、民意に反し、必要性そのものが根本から問われています。米国言いなりに日本国民の税金を際限なく注ぎ込む計画でもあり、直ちに中止すべきです。