2019年5月25日(土)
主張
イージス・アショア
国民の理解は到底得られない
安倍晋三政権が導入を計画する米国製の陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」について、防衛省が適地調査の結果を地元自治体に説明しようとしています。岩屋毅防衛相は調査に関し「大きな問題はない」(17日)としており、配備候補地の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)と同むつみ演習場(山口県萩市)を適地として決定する方針です。しかし、多くの地元住民は反対、懸念の声を上げています。イージス・アショア導入の口実だった朝鮮半島情勢は大きく変化し、新たな費用負担の問題なども持ち上がっており、国民の理解は到底得られません。
巨額の負担さらに膨らむ
安倍政権は2017年12月、北朝鮮の核・ミサイル開発が「より重大かつ差し迫った新たな段階の脅威」になっており、弾道ミサイル防衛の能力を抜本的に向上させる必要があるとして、イージス・アショア2基の導入を決定しました。しかし、翌18年6月の米朝首脳会談など、対話と交渉による朝鮮半島の非核化と平和体制構築を目指す動きが起こり、安倍政権も今や北朝鮮の「脅威」をあからさまに口にできなくなっています。
イージス・アショアの運用開始時期が想定より大幅に遅れることも明らかになっています。安倍政権は当初、23年度中に運用を開始するとしていました。ところが、先月2日に閣議決定した答弁書は、イージス・アショア本体と搭載レーダーを19年度から約5年間で製造した後、性能確認や設置などの作業を行うとし、米国との調整状況にもよるため、具体的な開始時期を「答えることは困難」だとしています。
運用開始時期の遅れは、防衛省がイージス・アショアに搭載するレーダーを米ロッキード・マーチン社製の最新レーダー「LMSSR」に決定(18年7月)したことが関わっています。
LMSSRは開発途上とされ、イージス・アショアへの搭載実績は米国を含めてなく、採用を決めたのは日本だけです。防衛省はいまだ、その性能を確認するための方法や実験施設が必要かどうかなどについて米側と協議中だとしています。しかも、米側が実験施設の建設費などを日本側負担にするよう求めていると報じられ、岩屋防衛相も「性能確認のために一定の費用が生じるという可能性がある」と認めています(3月12日、衆院安全保障委員会)。
イージス・アショアはトランプ米政権が購入を強く迫っている高額兵器の一つです。防衛省の発表によると、2基の取得費だけで約2400億円、導入後30年間の維持・運用費など約2000億円を合わせれば約4400億円もの巨額に上ります。レーダーの実験施設の建設費などが加われば、費用はさらに膨らむことになります。
配備ありきの姿勢改めよ
イージス・アショアの配備をめぐっては、地元住民らから、強大な出力を持つレーダーによる電磁波の影響や、迎撃ミサイルを発射した場合に演習場外の民間地にブースターが落下する危険など、懸念の声が数多く上がっています。Iターン(移住者の受け入れ)などの町づくりを阻害するとして、反対の声も広がっています。
安倍政権は配備ありきの姿勢を改め、イージス・アショア導入計画を撤回すべきです。