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2019年5月12日(日)

馬毛島買収 住民不在の交渉迷走

地権者打ち切り通告 防衛省「協議続ける」

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(写真)立石建設(タストン社の親会社)所有の建物=4月23日、馬毛島

 政府が米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)の移転候補地としている鹿児島県・馬毛島(まげしま)の売買交渉に関し、同島の大半を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京都)が防衛省に交渉打ち切りを通告したことが明らかになりました。地元の合意を得ないまま強引に進めてきた交渉が破綻に直面していますが、同省は引き続き「協議をしていく」と強引な姿勢を崩していません。

 2006年5月の米軍再編ロードマップで日米両政府は厚木基地(神奈川県)所属の米空母艦載機の岩国基地(山口県)への移転を合意。07年には馬毛島が移転先として浮上しました。11年の日米安全保障委員会(2プラス2)合意文書では、馬毛島に自衛隊基地を建設し、FCLPの代替地とすると初めて明記されました。

取得画策も難航

 防衛省は馬毛島の用地取得に乗り出しましたが、土地の評価額をめぐって同社の立石勲社長(当時)との交渉が難航。南西諸島での軍事力増強を狙う安倍政権のもとで、同省はあらゆる手法で同島の買収を画策したとみられます。

 関係者によれば、昨年、タストン社は債権者から相次いで破産を申し立てられました。同社が破産すれば、防衛省の交渉相手は破産管財人となります。馬毛島を格安で手に入れるため同省が働きかけたと関係者はみています。

 債権者の求めで昨年秋、交渉推進派の立石薫氏に社長が交代。その後交渉は一気に進み、今年1月、防衛省は同社と約160億円で馬毛島を買収することで大筋合意したと報じられました。一方、約240億円とされる同社の負債の穴埋めには足りません。

 そうした交渉姿勢への不満から、2月にタストン社が株主総会を開催。防衛省と交渉を進めてきた薫氏が2月19日付で解任され、同省に事実上に追い落とされた形の前任者の勲氏が社長に復帰しました。勲氏は書面や電話で同省担当者に面会を求めたものの、同省側が拒否する対応に出たため「縁が切れた」と文書で通告しました。

根強い反対運動

 ところが、岩屋毅防衛相は10日の記者会見で「売買契約の締結に向けて引き続き協議を行っていく」「(合意の)中身が今後の交渉においても前提になっていく」と明言。「一日も早くFCLP施設の確保をしていきたい」と述べました。馬毛島買収に関して「日本の継続的な取り組みを評価」した日米2プラス2(4月19日)の合意文書の手前、後に引けない防衛省が迷走を続けています。

 多くの住民が暮らす種子島からわずか12キロに位置する馬毛島での深刻な爆音被害をもたらすFCLP移転計画に対しては、地元住民が根強い反対運動を展開。八板俊輔・西之表市長も「馬毛島には(FCLP以外にも)ふさわしい活用方法がある」と表明しており、地元の合意は得られていません。

 さらに、日本共産党の田村貴昭衆院議員、仁比聡平参院議員の国会での追及で、タストン社が島の滑走路建設などに伴い違法な開発を行った疑いなども浮上しています。住民不在の売買交渉はただちにやめるべきです。


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