2019年5月10日(金)
新天皇即位の賀詞と、天皇の制度について
記者会見での志位委員長の一問一答
衆院は9日の本会議で、新天皇の即位にあたっての賀詞(祝意を示す言葉)を全会一致で可決しました。日本共産党の志位和夫委員長は同日の記者会見で、賀詞への態度や天皇の制度についての基本的な考え方について記者団の質問に次のように答えました。
――本会議で天皇即位に対する賀詞が可決されました。共産党も出席し、賛成しましたが、こういう対応の真意と議論の経緯等をうかがいます。
志位 天皇の制度というのは憲法上の制度です。この制度に基づいて新しい方が天皇に即位したのですから、祝意を示すことは当然だと考えています。私も談話で祝意を述べました。国会としても祝意を示すことは当然だと考えます。
ただ、(賀詞の)文言のなかで、「令和の御代」という言葉が使われています。「御代」には「天皇の治世」という意味もありますから、日本国憲法の国民主権の原則になじまないという態度を、(賀詞)起草委員会でわが党として表明しました。
――平成の(前天皇の)即位礼正殿の儀のあとの賀詞には反対しましたが、そのときとの違いは?
志位 当時の(日本共産党)綱領は「君主制の廃止」を掲げていました。その規定は2004年の綱領改定のさいに変えたわけです。改定した綱領では、天皇条項も含めて現行憲法のすべての条項を順守する立場を綱領に明記し、「君主制の廃止」という規定は削除しました。そういう綱領の改定に伴って、こういう態度を取ったということです。
――天皇制は憲法で明記されている一方で、封建的な身分制度の名残ではないかとの意見もありますが。
志位 私たちの綱領では、将来の問題として、日本共産党としては、天皇の制度は「民主主義および人間の平等の原則と両立するものではない」として、「民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ」と明記しています。同時に、天皇の制度は憲法上の制度ですから、その「存廃」は「将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの」だということを綱領では書いています。そういう対応をしていくということです。
――将来、天皇の制度が変わることがあるとしたら、憲法を変える手続きが必要ですか。
志位 そういうことになります。憲法上の制度ですから、その存廃は「国民の総意によって解決されるべきもの」だということを綱領に書いています。
「存廃」ですから、国民が「存続」という判断をすることもあるでしょうし、「変えよう」という判断をすることもあるでしょう。それは(国民の)総意によって、将来の問題として、解決していくべきだというのが綱領の立場です。
ただ、綱領のこの部分は、日本共産党として民主共和制の実現をはかるべきという「立場に立つ」という言い方になっています。つまり、「私たちの立場はこうです」という表明をしているのです。
そして同時に、憲法上の制度である以上、「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべき」だと述べているわけですから、綱領のこの規定は、「私たちの立場はこうです」――つまり将来的にこの制度の存廃が問題になったときには、そういう立場に立ちますと表明していますが、同時に、わが党として、この問題で、たとえば運動を起こしたりするというものではないということです。
――国会で女性宮家、女性天皇の導入の議論になった場合は、どういう姿勢で臨むのでしょうか。
志位 私たちは女性天皇、あるいは女性宮家は当然検討されるべきだと考えています。
――政府は今回の特例法による天皇退位は今後の先例になりうるとの見解ですが、今後の天皇退位についてはどのような立場ですか。
志位 退位特例法(制定)のときには、わが党は、1人の方がどんなに高齢になっても仕事を続けるというのは、日本国憲法の根本的な考え方である個人の尊厳にてらして問題があるのではないかと考え、退位に賛成するという対応をしました。いまいえるのは、この立場は理にかなっていたということです。
――平成の天皇在位30年の賀詞採択のさいには、共産党は天皇制を過度に賛美するような内容だとの理由で欠席しましたが。
志位 過度に賛美することになるというのが棄権の理由でした。国民主権の尊重の立場から、過度に天皇を礼賛・賛美することには私たちは賛成できないし、祝意を押し付けることもよくない。こういう立場を、わが党は一貫してとってきています。
――今回の賀詞はそれには当たらないという判断ですか。
志位 今回の賀詞の決議そのものについては、賛成しうるが、さきほど言った点が問題として残ったということで、その点は意見表明をしたということです。