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2019年4月23日(火)

きょうの潮流

 「憎しみは憎しみによってでなく、愛によって消し去る」。ブッダの言葉を引用しながら、戦後日本の復興に手を差し伸べたのはスリランカでした▼日本が国際社会に復帰したサンフランシスコ平和条約。のちに大統領となるジャヤワルダナ代表は日本への賠償権を放棄し、寛容を呼びかけました。長く西欧の植民地にされてきたことから、軍国日本の「アジア共栄」に惑わされた部分はあったものの、その演説は参加国の態度を変えたと伝えられています▼条約発効後に最初に国交を結んだこの国で連続爆破事件が起きました。最大都市コロンボを中心に、ホテルや教会を標的にした同時テロは死者290人、負傷者は500人に達し、日本人も巻き込まれています▼四半世紀に及んだ内戦が終わり、近年は観光地としても人気を高めている地だけに衝撃が走っています。日本からも年間4万をこえる旅行者があり、この10連休に向かう人も多く、不安はつきません▼いまだに宗教間の対立や政治の混乱は続いていますが、内戦や震災からようやく新しい時代にふみだそうとしている矢先のテロ。命を奪い、傷つける卑劣な暴力は、平和と和解をもとめる多民族国家に暗い影を落としました▼ジャーナリストの伊藤千尋さんが『凜としたアジア』でジャヤワルダナ文化センターに掲げられている言葉を紹介しています。「なぜ人間は獣になり、仲間を殺すのか、私には理解できない。結局のところ、だれもがだれかの親であり母であり子ではないか」


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