2019年4月17日(水)
変えよう セクハラない社会に
MIC院内集会
財務次官の女性記者へのセクハラ事件から1年。日本マスコミ文化労組情報会議(MIC)が15日に衆院第1議員会館で開いた集会では、実態やセクハラ根絶に向けた発言が相次ぎました。
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メディアの現場から
メディアの現場から神奈川新聞の蓮見朱加記者が報告しました。同新聞社では昨年、複数の幹部がセクハラなどで懲戒解雇されました。蓮見さんは女性記者が取材班を立ち上げメディアのセクハラを告発する企画を掲載したと紹介。「男性幹部になぜセクハラ・パワハラが長年許されてきたのか、ハラスメントが起きた構造を検証し報道したい」と語りました。
実態・思い・提言…次つぎ
各職域から報告がありました。
埼玉大学准教授の金井郁さんは労働組合が行った実態調査で、販売・接客業務に携わる女性の13・4%が顧客からセクハラ行為を受けたと回答したと紹介しました。
川崎労働組合総連合の寺田典子さんは、3割がセクハラ被害にあったとする川崎市内の介護事業所アンケート(2015年)を紹介。「研修や相談体制を整え、困難ケースに複数で対応できるよう制度を充実することが必要だ」とのべました。
川村学園女子大学教授の内海﨑貴子さんは教育実習生の10%程度(被害率3・5%、見聞率5・9%)がセクハラ被害にあっているとの調査結果を報告。加害者の66・7%が管理職、うち指導教員が47・6%を占め「指導教員と実習生という権力関係が背景にある。加害者のセクハラに対する認識が低い」と指摘しました。
映演労連書記次長の竹中博子さんは女性の38%、男性6%(全体平均21%)がセクハラを受けたことがあると回答した組合員のアンケート(昨年12月~今年1月実施)を紹介しました。
LGBT法連合会共同代表の池田宏さんは、性的指向(好きになる性)と性自認(心の性)についてのハラスメントの実態を告発。「セクハラ、パワハラに加え、性的指向・性自認に関わるハラスメントも包括的に禁止する実効性のある法制度を実現してほしい」としました。
立法・司法の世界のセクハラが報告されました。東京都町田市議の東友美さんは、酔っ払いに抱きつかれるなど有権者からのセクハラ被害を告発し、「有権者をむげにできない議員心理を利用し女性議員や候補に付け込んでくる。問題を社会に認知してほしい」と。
東京都八王子市議の陣内やすこさんは、自治体議員へのアンケート(15年報告)で議員らから52%が身体的な接触、卑わいな言動、侮蔑など性差別被害にあったと回答したことを報告。女性議員が声をあげ産休規定を実現した事例を紹介し、「議員への人権教育やセクハラ研修が必要だ」と語りました。
弁護士の橋本智子さんは、司法修習生時代に受けた指導教官からのセクハラ被害を証言しました。
就職活動中のセクハラについて「ビジネス・インサイダー・ジャパン」の竹下郁子記者が報告。同社の「緊急アンケート」では半数が就職活動中にセクハラ被害にあい、7割が誰にも相談していないとし、「就活生も規制の対象にした法改正を」と求めました。
財務次官事件から1年 変化は
財務次官の事件から1年、社会の変化が話し合われました。
財務省事件を契機に設立されたメディアで働く女性ネットワークの林美子代表世話人は、同ネットに約120人の女性が参加しているとし「安心して自分たちの思いを共有できる場があることでエンパワーメントされている」と語りました。
ネットメディア「バズフィード・ジャパン」創刊編集長の古田大輔さんは、「こういう場(院内集会)をMICがつくったことはすごく意義がある。社会にメッセージを発する立場であるメディア自身がまず変わっていくことが重要だ」と強調しました。
日本労働弁護団女性プロジェクトチーム座長の長谷川悠美弁護士は「働く女性のためのホットライン」の内容から報告。2014年から18年の相談でセクハラは42%と最多。財務省事件の18年はセクハラ相談が前年の2倍近くに。「事件を発端にセクハラといえるようになったのが1年の成果では」と語りました。
法整備・条約賛成求めて
集会を総括し、国際人権NGOの代表が発言しました。
ヒューマン・ライツ・ナウ事務局長の伊藤和子さんは、「性暴力被害がほとんど処罰されない状況を刑法改正の課題も含め変えていかねばならない」とし、国会で審議中の女性活躍推進法等改正案について「明確にセクハラ禁止規定を置くべきだ」と主張しました。
ヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表の土井香苗さんは今年6月の国際労働機関(ILO)総会で、仕事の世界に関する暴力やハラスメント禁止の条約が採択されようとしていると報告。日本政府が条約に賛成、批准するため、労働者及び職場の範囲を広げ、ハラスメントを禁止した法整備が必要だとのべました。