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2019年4月14日(日)

甲佐町 立ちすくむ被災者

排水溝修理に1300万円、住民負担なんて

熊本地震3年

 熊本地震から3年がたち、被災者の中には補修に必要な費用のあまりの大きさに立ちすくみ、震災前の暮らしを今も取り戻せず不便な思いをしている人々がいます。3人の死者が出た熊本県甲佐(こうさ)町にみてみました。(矢野昌弘)


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(写真)地面が波打った自宅近くで「震災以後、心が自由にならない」と語る男性=13日、熊本県甲佐町

 「臭いがするんですよ。すごいでしょう」

 自宅前の排水溝をみせる女性(66)は自宅が半壊の被害を受けました。

震災終わらず

 女性が暮らすのは戸建て住宅が10軒ほど集まる芝原団地。各家の生活排水を流していた排水溝は3年前の地震で波打ち、ところどころで排水が滞留するようになりました。金属製の重いフタをあけると、強烈な臭いとともにムシがわいていました。

 困った住民らは、業者に見積もりを出してもらったところ、1300万円の費用が必要になることがわかりました。

 住民らは、町の担当課に、震災関連の補助が受けられないか、たずねました。ところが、排水溝が公道に面しておらず、私有地内を流れているため、補助の対象にならないとの返事でした。仮に、補助が受けられても、費用の半分は住民負担となります。

 「屋根を取り換えて、壁もヒビが入って、修理に300万円がかかった。さらにまだ何百万円も負担するなんてとんでもない。震災は終わってないですよ」

少ない支援策

 同じ団地の男性(76)の自宅は家がかたむき、最大で22センチも沈みました。大規模半壊と認定され、自宅の修理に、これまで600万円を超える費用がかかりました。

 「行政は『私有地だから、公道に面してないから』とダメダメづくし。震災の支援策に不備があることを認めないと、被災者は前に進めない。支援策のメニューが少ないことが、復興の妨げになっている」と訴えます。

 同町に住む男性(75)の自宅は半壊と認定され、自宅が傾いています。地震で、引き戸は“自動ドア”。浴槽のお湯張り機能が壊れ、シャワーで浴槽にお湯をためます。土中にある生活排水の流入管がこわれ、臭いがします。「金がなかけん。そのまんまですよ。支援が薄いのはもちろん、そもそも金が出せん」といいます。

 被災者の相談に乗ってきた日本共産党の佐野安春町議は「今の制度では、自宅の修理に補助が出るといっても、まず自己資金がなければ補助も受けられない。支援メニューにないものや、しかも補助率が少ないのは、年金生活者にとっては負担が大きすぎる」と指摘します。

 さらに「地元紙の追跡調査では、『家計に不安』と答えた人が昨年より倍増しており、被災者の実感ではないか」と語ります。


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