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2019年4月11日(木)

バス死亡事故 運転士の勤務は

長い拘束 短い休息

神奈川中央交通の報告書

 昨年10月28日、横浜市内を走っていた路線バスで運転士が意識を失い、バスが柱などにぶつかって乗客の高校生が死亡しました。この運転士が事故前1カ月間で拘束時間が14時間を超える勤務が11回もあったことが10日、本紙が情報公開請求で入手した資料でわかりました。長時間勤務と意識を失ったことの因果関係が注目されます。(矢野昌弘)


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(写真)横浜市内を走る神奈川中央交通の路線バス=2018年10月、横浜市西区

 本紙が入手したのは、事故のバスを運営する神奈川中央交通(略称、神奈中)が事故の1カ月後に国土交通相へ提出した事故報告書です。事故の原因について「調査中」としつつ、「運転士が何らかの原因で意識を失っているため、車両制御不能の状態となった」としています。

14時間超が1カ月11回

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(写真)事故前1カ月間の運転士の勤務状況

 報告書では、運転士の事故までの1カ月間の勤務状況がわかりました。これによると、運転士は休日をいつもより多い12日(平均は11日)とっていました。ところが出勤した18日のうち、14時間を超えて拘束される日が11回もありました。最も長い日で16時間ちょうどの日がありました。

 神奈中の現役運転士は「1日14時間も働くことが普通になっていて、8時間勤務を“半分”と呼ぶ運転士もいる」と話します。

 「基本給だけでは生活できないから、残業手当をあてにして、14時間勤務をやりたがる運転士が多くいることも事実だ。運転士が不足していて長時間勤務を引き受けざるをえない実情もある」

退勤から出勤8時間だけ

 退勤から翌日の出勤までの休息時間(インターバル)については、10時間に満たない日が9回でした。10月10日は午後10時50分に退勤していますが、この時のインターバルは8時間ちょうど。翌日の11日は午前6時50分には出勤していました。

 8時間のインターバルは、バス運転士の働き方を定めた厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善の基準」(改善基準)ぎりぎりの短さです。

 自交総連大阪地方連合会の松下末宏書記次長は「1日の勤務が長く、しかも不規則。睡眠が極端に短い日が続いたと思われる。意識を失ったことと、睡眠不足の関係を疑ってもいい。こうした勤務サイクルが常態化しているとすれば、安全面や健康面からも問題だ」と指摘します。

 本紙の取材に神奈中は「対応できる者が不在」と答えました。


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