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2019年4月2日(火)

改定入管法施行

人権侵害の多発招く 「全件収容主義」見直しを

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(写真)入管施設で続く人権侵害に対し、法務省に抗議する人たち=3月18日、法務省前

 昨年末、国民や野党の反対を無視して与党らが強行採決した改定出入国管理法。多くの問題を残したまま1日に施行されました。残された大きな問題の一つが、退去強制手続きにおいて政府がとっている「全件収容主義」です。人権侵害が多発するとして、かつて政府自身も見直しを提案していました。

 現行の入管法では、違反調査から送還に至るまで容疑者を収容することを前提に条文が構成されています。これが「全件収容主義」と呼ばれています。日本を訪れた外国人は、入管から疑いをかけられれば収容され、その疑いが晴れるまで出ることができません。収容について法律上に明文はなく、すべて入管の「裁量」で行われています。

政府見直し提案

 かつては、政府自身がこうした「全件収容主義」を見直そうとしていました。1969年に国会に出された入管法改定案は、健康上の理由や逃亡の恐れがないなど一定の条件のもとに収容を「しないこともできる」と規定。さらに73年の同法改定案では、相当の理由がある場合に限って収容することができると規定しました。

 73年の改定案の提案理由について、吉岡章入国管理局長(当時)は「外国人の人権尊重により一層の配慮をする主旨から」だと説明。田中伊三次法相(同)は、現行制度を改めることで「退去強制事由が明らかで逃亡のおそれがある場合に限りまして容疑者を収容することとするとともに、収容できる期間も短縮しまして、よりいっそう人権尊重をはかったということでございます」と国会で答弁しています。

法律で歯止めを

 これらは、全体としては外国人の人権をさらに制約するもので廃案になりましたが、「全件収容主義」の部分に関しては、政府としても法律で一定の歯止めをかけようとしていたのです。

 3月26日の衆院法務委員会で、日本共産党の藤野保史衆院議員がこの問題を取り上げました。山下貴司法相は、「現場においても在宅のまま違反調査を進め、仮放免制度を弾力的に運用するなどして人権に配慮した柔軟な対応を行っている」として、「全件収容主義」の見直しは考えていないと答弁しました。(前田智也)


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(写真)質問する藤野保史議員=3月26日、衆院法務委

入管の「裁量」で深刻な人権侵害

 藤野保史衆院議員の話 山下法相は「人権に配慮した柔軟な対応をしている」と答弁しましたが、そうした対応はすべて入管の「裁量」です。そのもとで深刻な人権侵害が各地で発生しています。60年代も人権侵害が大問題になり、小委員会を衆院法務委員会に設置して、政府も入管法そのものを見直す提案をしました。

 施行された改定入管法は、各地の入管施設で発生し続けている深刻な人権侵害や、外国人がおかれている劣悪な労働条件の改善もないままに、「人手不足」を理由に約34万人の外国人を新たに受け入れます。「入口」を広げるのであれば「出口」の見直しも必要です。「全件収容主義」は見直し、直ちにやめるべきです。


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