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2019年3月15日(金)

主張

米軍駐留経費負担

法外な「1・5倍化要求」拒め

 トランプ米政権が、米軍駐留を受け入れている日本やドイツなどの同盟国に対し、駐留経費の全額にその50%を上乗せした額の負担を求める計画を検討していると報じられています。日米安保条約に基づく米軍地位協定は、在日米軍の維持経費の全てについて、施設・区域(基地や演習場など)の提供を除いて、米国が負担すると明記しています。駐留経費総額の1・5倍を支払えというのは、地位協定の負担原則に真っ向から反する常軌を逸した要求です。安倍晋三政権は拒否の態度を毅然(きぜん)と表明すべきです。

通用しない「恩恵」の対価

 米ブルームバーグ通信の報道(8日)によると、米軍駐留経費の負担をめぐり、トランプ政権が検討しているのは、「コスト(費用)プラス50」と呼ばれる計画です。計画には、駐留米兵の給与や空母、潜水艦の寄港費など、米側が負担している経費の支払いを求めることも含まれています。

 安倍政権は現在、在日米軍の駐留のため、「思いやり予算」(日本人従業員の労務費、施設整備費、水光熱費、訓練費)や、米軍用地の借り上げ料など計5810億円を負担しています(2018年度予算)。これに米側の負担分を加えて「コストプラス50」を適用し、さらに日本側負担の「米軍再編経費」と「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費」(計2212億円)を合わせれば、2兆円近くに達するとも見られています。

 駐留経費総額に50%を上乗せして負担を求めるのは、米軍駐留によって同盟国が受けている「恩恵」の対価と位置付けられているためと伝えられています。トランプ氏は今年1月の演説でも「われわれは多くの金持ちの国々を守っている。彼らはわれわれが守っている費用をたやすく支払うことができる」などと述べています。

 しかし、トランプ氏側の理屈は成り立ちません。

 ブルームバーグ通信が報じたように、「米軍基地が受け入れ国の利益のために置かれているというのは誤解に基づいた物語」であり、「それらの国にある米軍基地を米国が維持するのは米国の利益になるからというのが真実」(米国のダグラス・ルート北大西洋条約機構〈NATO〉前大使)です。

 もともと在日米軍は、「海兵遠征軍」や「空母打撃群」など、文字通りの海外遠征部隊であり、「日本防衛」を任務にしていません。「日本を守る」どころか、沖縄をはじめ各地で深刻な基地被害を住民に与えているのが実態です。

 「コストプラス50」には、同盟国を米国の政策に従わせる「ディール」(取引)の材料として使う狙いもあるとされます。米国防総省は、各国が負担すべき金額のほか、各国が米国と緊密に連携する政策を取る場合の割引額を算定するよう指示されているといいます。駐留経費負担で法外な金額を突き付けた上で「割引」をちらつかせ、トランプ氏が重視する貿易交渉などで米国の要求を受け入れさせる―。乱暴極まる異常な手法です。

税金の注ぎ込み許すな

 日米間では年末にも21年度以降の「思いやり予算」に関する特別協定の交渉が本格化します。安倍政権がトランプ政権の意に従って大幅な負担増を受け入れ、日本国民の税金を湯水のように注ぎ続けることは認められません。


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