2019年3月9日(土)
大阪入れ替えダブル選
制度私物化 「都」構想終わらせる時
帝塚山学院大学教授 薬師院仁志さんに聞く
大阪維新の会の松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が任期途中で辞職し、吉村氏が知事選に、松井氏が市長選に入れ替え立候補をします。維新の狙いと問題点はどこにあるのか。維新政治を厳しく批判してきた、帝塚山学院大学の薬師院仁志教授に聞きました。(藤原直)
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松井氏は、自分は2015年11月の府知事選で「大阪都」構想の実現を掲げて当選したので、公明党が「都」構想の住民投票を任期中に実施するとの約束を守らない以上、4月の統一地方選に合わせて知事・市長のダブル選を前倒しで行い、もう一度住民の声を聞くしかないと主張しています。
法の抜け穴
しかし、「都」構想は、大阪市を廃止し特別区に分割するもので、15年5月、同市での住民投票で否決されています。維新は同年11月のダブル選で勝利し、「都」構想の再挑戦が認められたと言っています。しかし、肝心の大阪市の市長選に当選した吉村氏の選挙公報には「都」構想のトの字もありませんでした。
「都」構想の住民投票を再び行うために必要なのは府市両議会の協力です。両議会で維新は過半数に及んでいませんが、民意なら4月の議会選で問えばいいのです。なのに、なぜ維新は知事・市長のダブル選まで同時に行うのか。首長選を、劇場型の政治を盛り上げる、両議会で過半数を取るための手段にしているとしか思えません。
これは、反維新が統一しにくい時期にダブル選を移す戦術でもあります。そして、首長選で人を選ぶ選挙を行いながら、維新が勝ちでもすれば「都」構想が認められたと声高に主張してくるでしょう。
しかも、通常の出直し選の場合は、再選されても任期は元の残任期間のみとなりますが、知事と市長の候補を入れ替えて立候補すれば新たに4年の任期を得られます。出直し選の任期規定は、現職が、選挙戦略の一環として相手陣営の準備が整わないうちに自ら退職して選挙に持ち込むといった弊害を防ごうとしたものです。入れ替え選はこうした法の趣旨を考えず、法の抜け穴をくぐろうとする一種の脱法行為と言わざるを得ません。
賛成いない
維新はあらゆる意味で、制度を自分たちの都合のいいように私物化しています。「大阪クロス選」とも報じられていますが、私に言わせれば“投げ出し交換選挙”です。どうせ交換するのなら、全部、別のに変えようやと言いたい。
大阪の現状は、結局もう、維新以外、「都」構想などというものに賛成してくれる党はないということなのです。だから、もう維新としては、知事、市長、府市両議会の選挙をいっぺんにやって全部、取るしかないんだと。そんなことになれば彼らの好き放題です。絶対に許してはいけません。
私は大阪市に住んでいますが、だいたい「都」構想は市民の間から出てきたものではありません。2010年、当時の橋下知事が「都」構想を言い出してから大阪は何年間、こんなことで足踏みしているのか。何年やっても理解が得られないような構想を権力者がいつまでも通そうとするのは間違っています。前の住民投票でもう十分です。「都」構想による対立と分断は、もう終わらせる時です。