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2019年3月5日(火)

ムダ事業復活の動き 下関北九州道路

「安倍・麻生道路」2000億円超

関門トンネル交通量 減る一方なのに

 無駄な大型公共事業への批判の高まりから2008年に凍結された全国6カ所の「海峡横断プロジェクト」のうち本州と九州を結ぶ関門海峡道路が、安倍政権のもとで「下関北九州道路」と名を変え事業化に向けた動きが強まっています。2000億円を超える巨額の整備費に厳しい目が向けられ、一度は中止に追い込まれた計画が「復活」した背景に何があるのか―。(丹田智之)


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(写真)下関北九州道路の計画がある関門海峡(対岸は北九州市)=2月18日、山口県下関市

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 「早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」

 山口県下関市が地元の安倍晋三首相は昨年10月25日、下関北九州道路の整備を推進する「参院議員の会」と官邸で面会した際に、そう発言したと報じられています。

 18年に下関北九州道路調査検討会が明らかにした推奨ルートは「海峡横断プロジェクト」時代とほぼ同じです。13年に公表された関門海峡道路建設促進協議会(当時)の試算によると総事業費2000億~2700億円とされています。安倍内閣は17年度予算で9年ぶりに調査費700万円(18年度も同額)を「復活」させ、調査・検討を再開しました。

 現在、本州と九州を結ぶ関門橋(上下6車線)は設計時に予想された交通量1日7万2千台に対して半分の3万8千台(17年)しか通行しておらず、関門トンネルの交通量も減り続けています。必要性や費用対効果が疑問視されている計画がなぜ進むのか―。

 調査・検討の再開に至った経緯を知る下関市の自民党関係者は言います。

 「九州経済連合会の会長は、麻生太郎副総理の弟の泰(ゆたか)氏だ。自民党内の会議では、安倍・麻生の関係でスタートした計画だといわれている。それだけに総理・副総理の在任中に事業化させたいという思いは両県の政治家に共通している。ここで動かなかったら経済界にも顔向けできない」

 九経連の麻生会長も「安定した安倍政権の時だからこそ、早く建設を決定してほしい」と発言(「西日本」18年12月17日付)しています。

 地元では「安倍・麻生道路」とも呼ばれている下関北九州道路。政権中枢が背後にひかえているにもかかわらず、迷走しています。

“袋小路”3本目計画

費用対効果 見通しなし

共産党 ムダな開発転換訴え

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(写真)安倍首相の地元に張り出されたポスター=山口県下関市

 下関北九州道路調査検討会が始まったのは2017年5月です。しかし、いまだに費用対効果の見通しすら示すことができていません。

 福岡県の担当者は「ルート、構造、整備手法の3点について議論を進めている。さまざまな指摘があり、まだスタートラインにも立てていない」と説明します。

 前出の自民党関係者も「山口・福岡の両県と下関市、北九州市は政府と経済界に振り回されている。自治体に巨額の費用負担が生じることに批判的な意見が出ているし、このまま(事業化まで)うまくいくとは思えない」と頭を抱えています。

 両県の日本共産党県議団は、必要性と採算性の面から下関北九州道路の事業化を許さない立場で論戦してきました。

 検討会が示す“必要性”の一つが関門トンネル、関門橋の老朽化に伴う代替道路としての役割です。日本共産党の木佐木大助・山口県議は「道路を維持管理するネクスコ西日本(西日本高速道路)によると、関門橋も関門トンネルも定期的にメンテナンスをすれば、まだ長期に使える」と指摘します。

 もう一つは、交通事故で関門トンネルの渋滞や通行止めが頻発しているとの理由です。山口りつ子・党福岡県議は「工事を除くと通行止めは16年までの5年間で405時間、1日あたり12分弱で、落下物によるものが大半」と反論しています。

 経済界など推進側は、4月にある山口・福岡の両県議選後に検討会での議論を加速させようと狙っています。

 たかせ菜穂子・党福岡県議団長は強調します。

 「限られた予算は県民の命と暮らしを守るために使うべきであり、不要不急の大型開発から災害対策への転換を訴えていきたい」


 下関北九州道路 山口県下関市と北九州市小倉北区の両岸を約2キロの橋梁(きょうりょう)かトンネルで結ぶ構想。中国・九州地方の経済団体が中心となり国に要望している計画で、現在ある一般国道・人道の関門トンネルと高速道路の関門橋に次ぐ関門海峡の3本目の道路です。同海峡にはJR山陽本線の関門トンネルと山陽新幹線の新関門トンネルもあります。


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