2019年3月2日(土)
主張
予算案の衆院強行
破綻はあらわ、撤回すべきだ
2019年度政府予算案の衆院通過を、数の力で押し通す―。経済統計の不正・偽装が明らかになり、いったん決定した予算案が出し直しになる前代未聞の異常事態の中で、野党と国民が求めた徹底審議にも応じない安倍晋三内閣と、与党の自民党・公明党の姿勢は、重大です。
19年度予算案は、首相の政権復帰以来の大軍拡に加え、10月からの消費税10%への引き上げを盛り込んだ「二重の亡国予算」です。経済統計の不正の全面究明はもとより、予算案を撤回して、国民生活最優先の財政・税制を実現することが重要です。
「二重の亡国予算」
厚生労働省の毎月勤労統計の不正・偽装にとどまらず、多数の政府の経済統計で不備や誤りが相次いだ問題は、政府に対する国民の信頼を揺るがしています。勤労統計の不正では、安倍首相の秘書官らの関与の疑いも浮上するなど、いよいよ底なしの状況です。一度決定された予算案が、政府の不始末で「修正」されたのは、かつてなかったことです。
予算案の決定前に、少なくとも根本匠厚労相には統計不正が報告されていたのに、公表することなく閣議決定し、後から「修正」したからといって、すまされる話ではありません。関係者の国会招致などで全容を解明し、土台が崩れた予算案を撤回することが、何より必要です。
だいたい、史上初めて100兆円を突破した19年度予算案は問題だらけです。軍事費は安倍氏の政権復帰以来7年連続の増額となり、ついに5兆2574億円と史上最高額を更新しました。一方、社会保障費については高齢化などによる「自然増」の伸びさえカットし、低所得者向け後期高齢者医療の保険料軽減措置を廃止するなどします。文字通り「大砲」を「バター」に優先させた予算です。
そのうえ、首相が固執する10月からの消費税の増税を盛り込んでいます。深刻な消費不況が続く中での消費税の増税が、暮らしと日本経済に壊滅的な打撃を及ぼすのは明らかです。「十二分の対策」だという、「軽減」にならない複数税率の導入や、キャッシュレス決済の「ポイント還元」、「プレミアム付き」商品券の発行などは、増税額よりもはるかに多くの予算を投じ、混乱をもたらすものです。
安倍政権は、経済が「成長」している、消費は持ち直し賃金も上がっていると、都合のいい数字を持ち出して、正当化します。しかし衆院の論戦の中で、その根拠は完全に崩壊しています。前提が崩れた増税は中止すべきです。大軍拡と消費税増税の「二重の亡国予算」強行は許されません。
失政認めて退陣を
19年度予算案には、大軍拡や消費税増税以外にも、大型開発偏重の公共事業費、行き詰まりが明らかな原発推進関連費など、数々の問題があります。31兆円余り国債を発行し、法人税減税などで大穴を開けた財政の立て直しにも逆行しています。
日銀の異常な金融緩和や財政支出、「規制緩和」で、大企業のもうけを増やせば、景気も暮らしもよくなると宣伝してきた「アベノミクス」の破綻は明白です。
経済・財政政策の失敗を認め、責任を取って退陣することこそ、首相のとるべき道です。