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2019年2月27日(水)

衆院予算委中央公聴会 公述人の意見陳述

 2019年度予算案を審議している衆院予算委員会で26日、公述人の意見陳述が行われました。公述人からは、応能負担原則に反する消費税の税率10%への引き上げへの厳しい批判や統計不正への不信の声などが相次ぎました。


公表値はウソ 統計法違反

弁護士 明石順平さん

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 昨年1月に毎月勤労統計調査における賃金統計の算出方法が変更され賃金が大きくかさ上げされました。要因は(1)サンプルの一部入れ替え(2)労働者数のベンチマーク(基準)を変更(3)復元処理(不正調査の補正)。例えると、ちょっと背の高い別人に入れ替え、シークレットブーツを履かせ、頭にシリコンを入れて身長を伸ばしたことです。(3)は(不正が発覚して)修正しましたが、(1)と(2)は修正せず、そのまま2017年と比較しています。そのため賃金が異常に伸びる結果となってしまいました。17年と18年で算出方法の異なるものを比較した伸び率は、端的にいってウソの数字になります。公表値は真実に反するため「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」を処する統計法60条2項に該当し統計法違反になります。

 厚労省は参考値の名目賃金伸び率のみ公表し、実質賃金についてはかたくなに公表しません。「名目は参考になるが実質は参考にすべきではない」などありえません。早急に公表すべきです。公表値の伸び率は異常にかさ上げされたうその数値なので公表をやめるべきです。

 家計最終消費支出は14~16年にかけて3年連続で減少し、実質賃金の大きな下落は、戦後最悪の消費停滞を引き起こしています。これは国民の生活がぜんぜん向上していないことを意味します。景気回復の実感がないのは当たり前です。

政府・与党が解明を阻む

法政大学教授 上西充子さん

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 毎月勤労統計の不正が昨年12月に発覚して以降、問題は広がりを見せています。不正な統計操作があったことは18年1月分から賃金水準が上振れし、その要因が探られる中で発覚したものですが、18年1月分から実施された毎月勤労統計の手法の変更についても適切な意思決定プロセスを経ておらず、官邸の不当な介入があった疑いが濃くなっています。

 公的な文書もデータも恣意(しい)的に改ざんされて信用できないならば、国家的危機です。国際的な信用の失墜にもつながります。経済統計のデータが信用ならない状況であれば、一国の経済のかじ取りの判断を誤ることにもつながります。現状では消費税増税の是非も判断できず、予算案の審議の前提が崩れています。このような現状において、何よりもまず必要なのは徹底した事実の解明です。再発防止は徹底した事実の解明に立脚しなければなりません。

 にもかかわらず、その事実解明を政府・与党が阻んでいるというのが現状です。国会では、質疑とかみ合わない論点ずらしの答弁や意味なく冗長な背景説明の答弁などで野党の質疑時間が奪われ続けています。野党の指摘が不当なものであるかのように印象付ける答弁も横行しています。

 私たちが主権者として国会を監視しなければ、国会の機能不全は続きます。そして不都合な事実も隠され続けます。その影響は私たちの暮らしに跳ね返ってきます。よりよい社会の構築に向けて国会が本来の機能を果たしうるために、私たちは主権者として不断の努力を重ねていきます。

負担能力に応じた税制を

立正大学法学部客員教授・税理士 浦野広明さん

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 税金は、負担能力に応じて払うのが原則です。国税でいえば所得税や法人税が中心になります。応能負担原則は国税、地方税、目的税など全てに対応しなければならない原則です。

 税金の使途に関しては、日本国憲法の下でどう使われるか考えなければなりません。憲法25条は、国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。税金の使途は憲法の下では福祉・社会保障のために使われないといけません。今は資本主義社会なので、市場で勝った人がたくさんの富を得る一方で、貧困者が生まれます。この事態を改革するために、所得再分配が必要になります。

 消費税推進の理論では(1)国の財政が悪化しているのでやむを得ない(2)社会保障の財源として重要―ということが言われます。しかし、消費税は国の財政状態をより悪化し、社会保障を削減するものです。

 来年度予算案の税収をみると、足りない部分の多くを国債でまかなう状況です。応能負担の中心に置くべき所得税や法人税が減収しており、消費税が税目で1番になっています。

 結果、国債の返還と利息の支払いが歳出の大きな部分を占めています。税収のほぼ4割が国債費の元金と利息の返還に充てられています。こうなると社会保障に回る余裕が出てきません。

 負担能力に応じた税制と全ての税金が社会保障目的税であるという原理を、今後の予算に生かしていただきたいと思います。


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