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2019年1月12日(土)

元徴用工問題、公正な解決への課題は

菅氏の態度こそ責任転嫁

一方的非難では解決せず

 菅義偉官房長官が韓国大法院判決は「日韓請求権協定違反」だとして、一方的に韓国側を非難したのは問題です。

 日韓両国の政府と最高裁は「請求権協定の下でも個人の請求権は消滅していない」との認識で一致しています。この間も日本政府や与党内からは「個人の請求権が消滅したわけではない」(河野太郎外相、昨年11月14日、衆院外務委員会)、「個人の請求権については消滅していない」(自民党の額賀福志郎日韓議連会長、同12月14日の日韓議連代表団と文在寅大統領との会談)と認める発言が出ています。

 個人の請求権が消滅していない以上、その実現、救済の問題は残されています。判決を「協定違反」とみなすことはできません。

 日本側の責任を一切棚上げした菅長官の姿勢こそ、「責任転嫁」にほかなりません。

 いま必要なのは、日韓両政府と新日鉄住金などの関係者が被害者の名誉と尊厳を回復し、公正な解決をはかるために努力を尽くすことです。そのために冷静な議論が求められていますが、安倍政権の対応は、それとは真逆の対応です。

 (日隈広志)

日本政府は「謙虚」な姿勢を

強制動員被害者の裁判を長年弁護してきた 山本晴太弁護士

 請求権協定など国家間の条約は確かに「司法府も含めた当事国全体を拘束する」ものです。しかし条約をどう解釈するか、その権限は司法府にあります。

 韓国大法院判決は、請求権協定について、その交渉で日本が一貫して植民地支配の不法性を否認したことなどを挙げ、植民地支配と侵略戦争に直結した不法行為に対する慰謝料の請求権は同協定の適用範囲外だとみなし、請求権協定によって日韓両国の外交保護権も、個人の請求権も消えていないと解釈しました。

 これは司法府として当然の条約の解釈権の行使であり、「協定違反」ではありません。文在寅大統領が「政府は司法の判決を重視しなければならない」と語ったことも三権分立の制度を持つ国として当然で、日本政府の非難は失礼極まります。韓国を対等な国として見ていないのではないかと感じます。

 日本政府には過去の植民地支配を反省し、強制動員被害者を救済しようという姿勢が一貫して欠けています。朝鮮半島を植民地支配したのは日本政府であり、新日鉄住金などの日本企業もそれに直結した反人道的な不法行為を行ったのです。「韓国の責任転嫁だ」などと強弁する前に、日本の植民地支配とその下での人権侵害の責任に「謙虚」に向き合い、被害者の人権回復に向けた努力を尽くすべきです。


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