2019年1月3日(木)
改定入管法 政府方針
詳細あいまい 課題解決に無策
改定入管法による4月からの外国人労働者受け入れ拡大に向け、政府は昨年末、受け入れ業種や人数、企業の責務等を記した基本方針と「分野別運用方針」を閣議決定しました。外国人労働者が安く使い捨てにされる危険など、国会審議で浮き彫りになった課題に実効性ある解決策は示されておらず、今月末からの通常国会でも焦点になることは必至です。(前田美咲)
同法は、人手不足対策と称し、就労目的の新たな在留資格「特定技能」を設けるもの。基本方針と分野別方針では、新資格の外国人を受け入れる14業種や業種ごとの受け入れ見込み人数(初年度から5年間)などを記しています。
焦点の一つは、基本方針で、受け入れ対象を「生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な」業種とする点です。“取り組みを行ってもなお困難”というのを「どうやって測り、(業界に)どういうことをやらせるのか」。先月25日の野党合同ヒアリングで、野党の質問に政府の明確な回答はありませんでした。
「使い捨て」固定化
出席した川上資人弁護士は「経営側の申告を真に受けるのか。『取り組み』を検証すべきだ」と批判。諦めや健康上の理由などで働きたくても働けていない人が300万人超に上るとして、「その人たちに国内労働市場に参加してもらう取り組みをしなければ、外国人は安く使える労働力だと固定化される」と警告しました。
受け入れ企業に課すとする「日本人と同等額以上の報酬」にも、担保はありません。「同等額以上」を検査する方法について、法務省は日本共産党国会議員団への説明で、入国審査官が雇用契約をチェックし、「近くの同じような職種の給与形態を調べたりする」と、あいまいな回答に終始しました。
「労働法制が専門でない入国審査官にできるのか。労働行政は関わらないのか」との問いには、「ハローワークの求人広告に示された給与額も指標の一つだ」と答える始末。「どうやって判断するか、細目は省令の下の要領で決める」と、課題を先送りしています。
派遣での雇用に歯止めがない点も重大です。基本方針では「派遣形態とすることが必要不可欠なものである場合には」「認める」と明記。分野別運用方針で、農業と漁業の派遣を認めました。農林水産省は、「農業現場の実情を把握していること」「地方公共団体や漁協など漁業関連の業務を行っている者が関与する派遣会社に限る」などの縛りがあると説明。共産党の高橋千鶴子衆院議員は「天下りの役員を1人入れて『関与している』と言うこともできる」と実効性のなさを指摘しました。
自民党の部会では早くも、他業種でも派遣を認めるべきだとの要望が出て、「政府が『将来にわたっての課題です』と含みを持たせた」と報道されています。(「朝日」先月26日付)
通常国会でも焦点
改定入管法の審議で最大の焦点の一つだった悪質ブローカー排除についても、基本方針は、関係機関の連携を強化し「排除を徹底する」「(送り出し国との)二国間取決めなどの政府間文書の作成等、必要な方策を講じる」とするだけ。共産党の仁比聡平参院議員は、「技能実習制度の二国間取決めは情報共有にとどまり実効性がない。新制度で何が変わるのか。送り出し国に対し、悪質業者の処分や排除を義務化することが必要だ」と追及。法務省は「取り決めの中身は交渉中で答えられない」と言葉を濁しています。
共産党など野党各党は、制度の詳細がなお不透明で、使い捨て労働の歯止めに実効性がないなどと指摘。「通常国会は“外国人労働者国会”になる」と徹底追及する構えです。