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2018年12月20日(木)

主張

原発輸出「総崩れ」

行き詰まり認めて完全撤退を

 日立製作所による英国での原発建設計画の延期・凍結が濃厚になっています。同計画は安倍晋三政権が官民挙げて推進してきた「原発輸出」の試金石とされています。今月初めには三菱重工業によるトルコでの原発建設も断念の方向であることが明らかになりました。いずれも建設費が膨張し資金の見通しが立たないことなどが要因です。「成長戦略」の柱に位置づけて首相自身がトップセールスで売り込みを図ってきた原発輸出の行き詰まりはいよいよ明白です。

安倍首相自身も売り込み

 日立の計画は英国の中西部にあるアングルシー島に原発2基をつくるというものです。建設費が当初の1・5倍の3兆円にも膨れ上がり、日立は民間事業者からの出資のほか、日英両政府の公的資金をあてにし、6月には世耕弘成経済産業相が、政府100%出資の日本貿易保険などの活用を表明していました。それでも資金調達のめどが立たなくなったものです。日立製作所の中西宏明会長(経団連会長)は「もう限界だ」とのべ、暗礁に乗り上げていることを認めました。

 2011年の東京電力福島第1原発事故のあと、世界中で原発の「安全対策費」が高騰しており、原発は事業として成り立たなくなっています。

 安倍首相がトルコのエルドアン大統領とのトップセールスで、三菱重工業とともにすすめた黒海沿岸での4基の原発建設計画が断念の動きになったのも、費用が膨れて2倍以上の4兆円にもなったためです。地震多発国のトルコへの原発輸出には、「『安全神話』も輸出するのか」と批判が上がっていました。

 日立が受注したリトアニアでの計画も、12年に建設の是非を問う国民投票が行われ、反対が過半数に達したことで中断に追いこまれました。ベトナムでも、福島第1原発事故前の10年に原発の受注が決まっていましたが、同政府が建設計画を撤回しました。

 ほかにもすでに、米国、台湾、インドへの原発輸出がそれぞれ断念や保留に追い込まれています。まさに総崩れです。

 原発輸出は経済政策「アベノミクス」の「成長戦略」の重要な柱です。安倍首相が政権に復帰した直後の13年に打ち出した「インフラシステム輸出戦略」では、原発輸出を10年間で約2兆円へ7倍化することを掲げました。その内容もそれまでの部品や設備の輸出から、原子炉を含む原発プラント(設備一式)への輸出へと大きく変えようとするものでした。

 原発輸出を「成長戦略」にすること自体、深刻な福島原発事故の教訓に学ぼうとしない許しがたい姿勢です。その「国策」が脱原発、再生可能エネルギーの拡大という世界の流れに逆行するものであることが浮き彫りになっています。

内外での原発固執やめよ

 安倍政権が「日本の原子力技術への期待の声はある」(菅義偉官房長官)などと、原発輸出にあくまで固執していることは重大です。中西・日立会長が「原発のリプレース(建て替え)・新増設が必須だ」とのべ、国内で活路を見いだそうとしていることは、あまりにも無反省な悪あがきです。

 道理のない原発の推進は国外でも国内でも、きっぱり断念すべきです。


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