2018年12月13日(木)
主張
核兵器禁止決議
問われる被爆国政府の立場
国連総会が先週、核兵器禁止条約への署名と批准を呼びかける決議を126カ国、国連加盟国の約3分の2の賛成で可決しました。禁止条約発効を求める国際社会の多数意思が改めて示されました。
「橋渡し」論の破綻
今年の総会では約20カ国から、禁止条約の批准を準備しているとの発言がありました。発効には50カ国の批准が必要です。現在までに批准した19カ国を合わせると、近い将来の発効が見通せます。この状況に、核保有国は圧力を感じています。他の問題では対立しあう国々を含む核保有五大国(米英仏ロ中)が一致して禁止条約に反対する声明(10月22日)を発表したことは、危機感の表れです。
核兵器廃絶への道をどのように切り開くのかが今、すべての国に問われています。とりわけ、核兵器による惨禍を体験した日本には、特別の責務があります。
日本政府は、禁止条約に反対する核保有国と支持する非核保有国の「橋渡し」をすると主張してきました。しかし、今回の総会では、「橋渡し」論の破綻がはっきりしました。
安倍晋三政権は核保有国と同様に、核兵器禁止条約の批准を求める国連総会決議案に反対しました。この姿勢は、反核運動や被爆者からきびしい批判を浴びるとともに、非核保有国からも強い不満が出されました。
総会では、核兵器廃絶の行程を含む条約の交渉を求める決議、核不拡散条約(NPT)再検討会議での核兵器廃絶の「明確な約束」の実行を求める決議などが、加盟国の3分の2を超える賛成で採択されましたが、日本政府はこれらの決議にも棄権しました。
日本政府はこれまで、広い賛成を得るために、対立点が浮き彫りにならないような核兵器に関する決議案を提案してきました。しかし、非核保有国からは、今回も禁止条約に一言も言及がないことを批判されました。一方、日本の決議案が、核軍備撤廃交渉の義務を明記しているNPTに言及した点を、アメリカは「時代遅れ」などと非難し、共同提案国から降りました。この部分は、非核保有国からの指摘を受け、修正した箇所です。結局、米仏は棄権し、中ロは反対しました。
アメリカの「核の傘」に依存し核兵器使用を容認しながら、核軍縮を訴えるというごまかしは、もはや通用しません。欺まん的な立場を続けるなら、国際的な孤立と外交力の低下は避けられません。
被爆75年の2020年には5年に1度のNPT再検討会議が開かれます。しかし、米ロは核兵器固執の姿勢を強め、「核兵器のない世界」の実現を約束した再検討会議の合意まで否定しようとしています。このときに日本政府に求められるのは、世界で唯一の戦争被爆国として、核保有国にNPTの義務と合意の履行、禁止条約への参加を訴える外交努力です。
被爆者の願い受け止めよ
国内では340以上の自治体が核兵器禁止条約の署名、批准を求める意見書を可決しています。ヒバクシャ国際署名は830万人分が国連に提出されました。安倍政権はこの声を真摯(しんし)に受け止めるべきです。それをあくまで拒むのなら、市民と野党の共闘の力で署名・批准する政府をつくることが必要です。