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2018年11月30日(金)

韓国最高裁 三菱重工に賠償命令

徴用工裁判 挺身隊も認める

 韓国最高裁は29日、戦時中に徴用工や挺身(ていしん)隊員として強制的に働かされたとする韓国人が三菱重工に損害賠償を求めた二つの訴訟で、同社の上告を棄却し、1人当たり8000万から1億5000万ウォン(約800万~1500万円)の賠償を命じました。最高裁は10月30日に新日鉄住金に対し、賠償命令を出しており、3件の裁判で日本企業の敗訴が確定しました。

 今回の訴訟のうち1件の原告は、1944年に広島にあった三菱重工の工場に動員された韓国人元徴用工5人で、「強制連行され、働かされたうえに被爆した」として損害賠償を求めていました。もう1件は、44年から名古屋市内の軍需工場で女子勤労挺身隊として過酷な労働を強いられたとする韓国人女性や遺族ら5人です。

 最高裁は新日鉄住金の判決同様、「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為」と認定。「強制動員被害者の日本企業への慰謝料請求権は(1965年の日韓)請求権協定の適用対象に含まれない」と判断しました。

根本に反人道的な不法行為

 広島の工場で働かされた原告は、1944年の国民徴用令の下、集められました。寮での行動は監視され、貯金したとされた賃金も支払われていません。45年8月、広島に投下された原爆で被爆。後遺症に苦しめられました。原告5人は全員が亡くなっています。裁判を引き継いだ遺族の一人は「結果を私が見届けることになり、複雑だ」と語りました。

 元挺身隊員の原告は、当時13歳、14歳でした。日曜を除いて毎日10時間働き、満足な食事も与えられませんでした。44年12月に発生した東南海地震で工場が崩れた際も、けがをした仲間が放置され死に至りました。89歳の金性珠(キム・ソンジュ)さんは「日本は謝罪と賠償をしてほしい」と涙を流し語りました。

 こうして原告たちは筆舌に尽くし難い労働を強いられたことに対し、名誉と尊厳の回復を求めてきました。

 請求権をめぐっては、日韓の両政府も、両最高裁も、個人の請求権は「消滅していない」との見解で一致しています。さらに政府は今月14日の衆院外務委員会で、日本共産党の穀田恵二議員の質問に対し、個人の慰謝料への請求権は、1965年の日韓請求権協定の対象に含まれていないと認めています。

 この問題の根本は、日本の植民地支配と侵略戦争のもとで起こった日本政府と企業による反人道的な不法行為に対する人権問題です。日本政府は原告の訴えに耳を傾け、公正な解決に向けた努力をすべきです。(栗原千鶴)


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