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2018年11月25日(日)

外国人労働者受け入れ拡大

介護現場で不安の声

処遇改善と人権保障こそ

 「深刻な人材不足」を理由に外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定で法務省は、制度導入から5年後までに14業種で約34万人を受け入れるとしています。そのうち最も多いのが介護業の6万人です。現在でも低賃金などの処遇改善が求められている介護現場で、労働者の働く環境を抜本的に改善しないまま外国人労働者の受け入れを拡大しようとしていることに不安の声が上がっています。(北野ひろみ)


 現在、外国人労働者が日本の介護分野で働くには、(1)経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補生(2)外国人技能実習生(3)介護福祉士資格を得て介護現場で働く人―のいずれかの在留資格が必要です。入管法改定案は、四つ目の在留資格として「特定技能」を設けるとしています。

 EPA介護福祉士候補生や技能実習生は、母国で働くための「技能移転」を目的としたものだとしています。一方、今回の入管法改定案では、「特定技能」を「経済・社会基盤の確保」のために日本国内で働くためだと明記しました。

安い労働力として

 厚労省は5月、2025年度までに約33万6千人の介護人材が不足すると公表しました。その原因は介護現場の過酷な労働実態と低い賃金水準にあります。

 安倍政権は介護人材確保のために、臨時の介護報酬改定などで「月平均5・7万円の処遇改善を行ってきた」と誇っています。しかし、実態は定期昇給に充てられたものが多く、基本給の引き上げなどの抜本改善にはつながっていません。介護職の平均給与月額は17年調査で約27万円と、全産業平均40万円と比べてもいまだ十数万円以上も低いままです。

 一方で安倍政権は、介護事業所自体への報酬を連続して引き下げてきました。職員の処遇を改善したくても対処する体力がない事業所が多いのが実態です。

 安倍政権が介護業で外国人労働者の受け入れ拡大を急ぐ背景には、介護保険制度の改悪で働く環境を悪化させ、深刻な人材不足を生み出した自らの責任に目をつぶり、安価な労働力として外国人労働者を増やすことで問題を解決したいという狙いが透けてみえます。

 今回政府は、新たな在留資格へは外国人技能実習生からの転用を見込んでいるとしています。

 しかし、技能実習制度で「介護」職種を解禁したのは17年11月。同制度では初の対人サービスへの解禁で、今年10月末時点で247人が実習生として入国したばかりです。

 同制度の「介護」職種への拡大にあたって安倍政権は、“労働力とはしない”ことを改めて確認しました。同時に、外国人労働者の人権保護のために、監理団体を許可制とするなど「管理監督体制の強化」を盛り込みました。実態や問題点の検証はまさにこれからです。

入管法改定は逆行

 新資格での介護現場への外国人労働者の受け入れ拡大に、国民の不安は残されたままです。一方、外国人労働者は、日本で安心して働く環境を求めています。技能実習制度で横行する人権侵害の実態把握と人権侵害を無くす取り組みの強化が求められています。

 安倍政権は、問題だらけの入管法改定案の早期成立の姿勢を崩していません。改定強行は、国民の不安にも外国人労働者の願いにも逆行するもので、到底、介護現場の労働実態の改善も人権保障もかなえられません。

 外国人材の受け入れのための基盤ともなり安心・安全な介護にもつながる介護労働者の抜本的な処遇改善と、人権保障の仕組みづくりこそ急ぐべきです。

表:外国人が介護職種で働くための在留資格

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