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2018年11月6日(火)

徹底批判 安倍9条改憲

首相に関与する権限なし

 所信表明演説で国会に向かって改憲の合意形成を呼び掛けたことや、自衛隊観閲式での訓示などで事実上改憲の号令をしたことなどを批判された安倍晋三首相は、三権分立や憲法尊重擁護義務(憲法99条)に反するとの批判は「当たらない」と開き直っています。こうした開き直りは、安倍首相に憲法を語る資格がないことをますます証明するだけです。

憲法96条の規定

 そもそも首相に「憲法の改正」に関与する権限はあるのでしょうか。改憲の手続きを定めた憲法96条は、改憲は最終的に国民投票で決定されるとしつつ、国会の改憲発議権を定めています。

 そこでは、国会議員は必要に応じて改憲を語り、改憲原案を国会に提出できますが、内閣の改憲原案の提出権については否定されているというのが憲法の通説です。

 憲法の制定と改正は、国民主権にいう「主権」の行使にかかわり、国民投票はそのあらわれです。憲法はまさに国民が直接つくりだすものなのです。

 国民投票の対象になる改憲案の発議権は、国民の代表機関である国会が独占するものとされます。そこで、改憲原案の提出権も国会議員のみに許され、内閣は原案の提出権を持たないとされているのです。改憲手続き法でも内閣による改憲原案提出の手続きは定められていません。

 これに対し、法律については、国会が「唯一の立法機関」(憲法41条)とされながら内閣の法案提出権を認めるのが実務であり学説の多数です。法律については、議院内閣制のもとで国会と内閣が協働する側面が重視され、内閣は法案を提出する限度で立法に関与することが認められています。しかし、立法権と改憲の発議権は性格が異なる全く別の権限であり、同様に理解できないとされています。

 このように内閣に改憲原案を作成、発案する権限はありません。内閣に改憲に関与する権限がない以上、改憲について首相の資格であれこれ発言するのが禁じられるのは当然です。まして首相が国会で改憲を指図するなど論外です。実力組織である自衛隊を前に、改憲をあおることなど言語道断です。

 公明党の山口那津男代表も「憲法について政府は発議権を持っていないし、憲法尊重義務を負っている」(10月31日)と発言し、自らが代表質問で改憲に触れなかったのは「当然だ」と述べました。

憲法99条の理念

 安倍首相は、憲法99条の公務員の憲法尊重擁護義務について、「憲法が定める手続きによる憲法改正について検討し、主張することを禁止する趣旨ではない」(10月30日)などとも述べました。しかし、憲法を守ろうともしない権力者が「改憲」を叫ぶことは、憲法理念の積極的実現を義務付ける99条の精神を踏みにじるものであることも当然です。

 安倍首相は、「憲法改正は自民党の結党以来の党是だ」と言い続けています。政党の主義主張は自由ですが、権力者の地位にあるものが一貫して憲法を守るのではなく、改憲を唱え続けてきたこと自体が立憲主義に反します。その根源には、海外派兵などを改憲によって可能にすることを狙う日米同盟体制があります。(中祖寅一)


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