2018年8月21日(火)
主張
学校のブロック塀
子どもの命守る対策を早急に
全国の国公私立の幼稚園、小中学校、高校など約5万1千校のうち約1万2600校で安全性に問題のあるブロック塀があることが、文部科学省の調査で分かりました。調査は、6月の大阪北部地震でブロック塀の下敷きになった女児が死亡する痛ましい事故を受け緊急に行われたものです。子どもの安全が最優先されなければならない学校で、危険なブロック塀が数多く存在し、放置されてきたことは、重大です。大阪北部地震後、危険な塀の撤去などが進みつつありますが、政府は自治体任せにせず、取り組みを加速させるための対策を強めることが重要です。
危険が置き去りにされ
文科省の緊急調査結果(10日発表)は、学校にあるブロック塀の多くが危険な状態にあることを改めて浮き彫りにしています。ブロック塀がある学校は、全国の学校の約4割にあたる1万9900校余でした。そのうちの約6割(約1万2600校)の学校で、安全性に問題を抱えるブロック塀があったことは、あまりに深刻です。
これらのブロック塀は、1981年改定の建築基準法の基準(ブロック塀の高さを2・2メートル以下にする、塀を支える「控え壁」の設置など)に反していたほか、劣化や損傷などが見られました。緊急調査は「外観にもとづく点検」なので、使い続けるには、鉄筋の強度など内部調査が必要となります。チェックが進めば、危険なブロック塀が増える可能性があります。
問題があるとされたブロック塀のある学校のうち、約2500校で撤去や周囲への立ち入り禁止などの措置がとられていませんでした。未報告、点検未完了の学校も約960校残されています。
緊急調査は7月末時点の集計です。その後、自治体や学校によっては危険な塀の撤去や補強などの対策を強めているところもありますが、予算がネックになるなどして、はかどらないところもあります。夏休み中をめどに危険な状態が解消できるよう、調査と点検をさらに徹底して行うとともに、安全確保へ向けて、国などが財政的な対応を含め、特別な手だてを検討することが急がれます。
学校の耐震化をめぐっては、これまで国庫補助の対象は校舎や体育館などに限定されていました。ブロック塀は点検対象にもなっておらず、注意喚起もされていませんでした。ブロック塀の安全性の全国的な調査そのものも、今回が初めてです。78年の宮城県沖地震ではブロック塀倒壊で多くの死者が出るなど、ブロック塀のリスクは早くから指摘されてきたにもかかわらず、危険が置き去りにされ、後手に回ってきたことは大問題です。学校は子どもだけでなく、災害時は地域住民の避難先としても安全が確保されなければならない場所です。国と自治体は、これまでの認識を改め、悲劇を繰り返さないために、万全の対策をとることが求められます。
安全の検証・総点検こそ
危険なブロック塀は学校内だけでなく、民家所有のものなど地域にも多くあります。撤去・改修のためには、所有者任せにするのでなく、行政が率先して点検し財政援助も含め促進をはかる仕組みをつくることが急務です。通学路を中心にブロック塀をはじめ危険箇所を総点検し、危険除去のための対応に本腰を入れるべきです。