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2018年8月18日(土)

東京五輪のサマータイム提案

国民生活が大混乱に

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(元首相)が提案したサマータイム(夏時間)の導入をめぐり、安倍晋三首相が自民党に検討を指示(7日)し、麻生太郎財務相も「悪い話ではない」と述べて賛意を示しました(15日)。しかし、「実現不可能だ」などの世論の厳しい批判が広がっています。

情報システムは

 サマータイムは、夏の一定期間、国(地域)の時刻そのものを変更します。森氏は日本標準時を2時間早めることを提案。現在の午前5時が午前7時と表示されることになります。

 しかし時刻を変更すれば国民生活は大混乱に陥ります。

 立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授はSNS上に投稿したスライドで、五輪までに夏時間を「社会的な大混乱なく実施することは不可能」だと主張。政府・自治体はじめ医療・金融・運輸・エネルギー・通信放送・防衛などの重要インフラから企業・家電にまで使用されている情報システムには「修正が不可能な場合が多々」あると指摘します。修正費用は重要インフラだけで3000億円に上り、対応機器の置き換えには数年かかると見積もります。

 東洋大学情報連携学部長の坂村健教授は、システム改修などによる数千億円規模の「経済効果」があるものの、五輪までの短期間で「多くの害が予測されることを、ただやって(2年間で)壊すために、皆が必死で働くことが経済効果だろうか」(「毎日」16日付コラム)と批判しています。

長時間労働懸念

 予測される害とは―。時計の針を進めた分、早寝をしなければ睡眠時間の削減となり、生活習慣病やうつ病などの増加(2012年、日本睡眠学会『サマータイム~健康に与える影響』)や残業の増加などいっそうの長時間労働が懸念されます。

 夏時間を採用している欧州連合(EU)では今年に入り、健康悪化を理由に夏時間廃止論が高まっています。ロシアでは心筋梗塞が増えたなどとして廃止(11年)。日本も1948年に実施しましたが「労働強化」「睡眠不足」を招き、4年で廃止しました。

 森氏は導入理由に今夏の記録的猛暑を受けた五輪の「暑さ対策」をあげますが、開催時期を秋などに変えればいい話です。安倍政権は、世界の夏時間廃止の流れに逆行し、社会に大混乱をもたらす夏時間導入の検討をやめるべきです。

 (日隈広志)

国民の健康害する

石川勤労者医療協会 城北病院精神・神経科医師 松浦健伸さん

 人間の約24時間の体内時計リズムは非常に精密です。起きる時間が普段より10分違うだけで、自律神経や体温上昇、ホルモンの分泌、脳の活動などに影響を与えます。1年間で変化する日照時間に合わせ、ゆっくりと体内リズムも変化しています。

 夏時間はそのような自然の体内変化を強制的に1日で1、2時間変更させます。1時間でも体にとっては大変な変化です。急激な変化が体内リズムに良いはずがありません。最初は睡眠時間が減り、心筋梗塞のリスクが上昇、さらに徐々に肥満症や生活習慣病を発症させてゆく恐れがあります。

 五輪にはスポーツを通して健康に対する関心を高める意義もあります。その五輪を機に国民の健康を害する夏時間の導入など本末転倒です。


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