2018年8月12日(日)
欧州 ライアンエアー
航空労働者 最大規模のスト
巧妙に非正規雇用 欠勤 仮病か医者に問い合わせ
過酷な実態改めよ
【ベルリン=伊藤寿庸】欧州で旅客数最大の航空会社であるライアンエアー(本社アイルランド)のパイロット労組が10日、5カ国で24時間ストを実施しました。背景には、労働組合を長年認めてこなかった同社の反労働者的な経営体質があります。7月25、26日、4カ国の客室乗務員がストを行っており、労働者のたたかいが同社始まって以来、最大規模に発展しています。
5カ国で24時間実施
独紙フランクフルター・アルゲマイネ(電子版)7日付は、常に効率化の圧力にさらされている職場の実態を報道しました。
▽忌引や病休の際も、会社が欠勤の理由を電話で問いただし、仮病かどうか医者にも問い合わせる▽機内で有料で販売する飲料、食事などの売り上げが低いと、同僚の前で上司が追及する▽飛行機が長時間遅れてクルーが疲れ切っていても、次の便に乗務するよう求められる―。
過酷な実態を変えようと、7月、ライアンエアーの21カ国86カ所の職場に勤務する労働者が「ライアンエアー・クルー憲章」を採択しました。
客室乗務員は、▽公正な生活できる賃金▽勤続年数に応じた昇給▽勤務中の水や食事、ユニホームの自己負担の廃止―などを要求。このほか、▽病休手当の支給▽機内での売り上げ増への圧力や個人間の競争奨励▽売り上げ実績による昇進、転勤、処分の中止―を求めています。
特に切実なのは、各国の労働法の尊重です。ライアンエアーは本社のある規制緩和の進んだアイルランドの労働法を適用しており、労働者が会社に異議申し立てしようとすると、アイルランドの法廷に訴えなければなりませんでした。
また同社はパイロットに対して、アイルランド法に基づいて自らが社長の「会社」を設立させ、その会社との請負契約を結ぶ形で直接雇用を避けるなどの複雑な手法で、正規雇用の場合に生じる税金や社会保険料を「節約」してきました。
しかしドイツ、オランダなどで、ライアンエアーとパイロットは実質的な雇用関係にあるとみなした検察や税務当局が介入。ドイツでは全パイロットを正規雇用にするなど見直しを迫られています。