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2018年7月27日(金)

シリーズ 自衛隊はどこへ 戦争と平和のはざまで

行き詰まるPKO派兵

隊員の心身疲弊 現地住民は苦境

 安倍政権は憲法9条改悪の地ならしのために、戦争法=安保法制にもとづき海外の「戦地」に自衛隊を派兵しました。隠蔽(いんぺい)した南スーダンPKО(国連平和維持活動)部隊の「日報」には、「戦闘」の文字が随所に明記され、隊員の心身がむしばまれていることが明らかになりました。PKO派兵は行き詰まりをみせています。


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 「海外での武力行使=海外派兵は憲法9条違反」。歴代政府はこの憲法解釈とPKО派兵との“整合性”をとるため、「紛争当事者間の停戦合意」の存在など派遣5原則を設定。この原則は安倍政権も維持しています。

 しかし、南スーダンでは2013年12月以降、大統領派と当時の副大統領派の対立が深刻化し、全土が戦闘状態に。16年7月には自衛隊が活動していた首都ジュバで大規模な戦闘が発生しました。この時点で5原則は崩れ、即時撤退するのが当然でした。

 ところが安倍晋三首相は「(戦争法)実行のときだ」(同年9月)と号令。11月に安保法制の新任務「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」を付与した第11次隊を送り、昨年5月に撤収しました。こうしたことから、安保法制の実績づくりのための派兵であったことは明らかです。

 第11次隊の多くは陸上自衛隊青森駐屯地(青森市)に所属しています。「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」の共同代表で、医師の大竹進さんの診療所には、同駐屯地からの来院者もいます。

 「政府が『派遣は問題ない』とするので、隊員らは内部で現場の実態を封印します。その負荷は大きいものです。戦争法の犠牲者、自衛官の心と体をケアする準備と覚悟が、医療者に迫られていると感じます」と大竹さんは話します。

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(写真)南スーダン派遣施設隊の「日報」

ストレス

 本紙が入手した「南スーダン派遣施設隊(第10次要員)成果報告」は、16年7月8~11日に南スーダンの首都ジュバで発生した政府軍・反政府勢力の激しい戦闘後、隊員らが入眠障害や音への恐怖心、ストレスなどを訴える様子を記し、事態の深刻さをこう指摘しています。

 「帰国後の回復が順調に行われなければ、メンタル不調者(抑うつ傾向から自殺)の発生も予想される」

 今年3月12日の政府答弁書は、南スーダン派遣施設隊が12~17年5月までに精神疾患や不眠症などの「精神・行動障害」に該当した人数は「初診78人」、「再診127人」。帰還後の在職中に死亡した人数は「自殺2人」と発表しました。

 さらに増えている可能性もありますが、防衛省・自衛隊は南スーダン派兵の実態について厳しいかん口令を敷いています。

 当初は「破棄した」として隠蔽されていた南スーダン派兵の日報には、16年7月にジュバで政府軍と反政府軍による「戦闘」が発生したことが記述。「派遣5原則」が明らかに崩れていることを決定づけるものでした。しかし、稲田朋美防衛相(当時)は「法的な意味の戦闘行為ではない」(17年2月8日、衆院予算委)と強弁し、派兵を正当化しました。

 「南スーダンPKO派遣差止訴訟」の佐藤博文弁護団団長は、日本政府の姿勢を「部隊撤収の理由を“現地での政府軍と反政府軍との戦闘・治安の悪化ではない”と否定しています。自らの行為を検証しない者は、必ず同じ過ちを繰り返す」と厳しく批判します。

 同訴訟は現役自衛官の母親が原告。戦争法の改定PKО法と今回の派兵の違憲性について徹底した審理・公正で迅速な判決を求めています。国連南スーダン派遣団(UNMISS)の司令部要員として残る自衛官の帰還も訴え、9月25日には札幌地裁で6回目の口頭弁論が行われる予定です。

矛盾拡大

 佐藤さんは1992年に制定されたPKО協力法が当初から憲法9条に反する立法だったと強調します。

 佐藤さんは「さらに現在では国連憲章第7章(平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動)に基づき、PKOのほとんどが武力行使の権限を付与され、住民保護のために敵対勢力との『交戦』を前提としています。自衛隊の海外派遣は憲法9条との整合性はますますなくなっている」と指摘。「『国際貢献』というのなら、何も自衛隊を派遣する必要はありません。NGО支援の充実など、いくらでも他の道があります」と話します。

 現地で支援活動を行ってきた日本国際ボランティアセンター(JVC)の今井高樹代表は、現在も不安定な治安状況、深刻な食糧難が続いていると強調。「対立していた大統領派と副大統領派が6月末に直接会談し停戦協定にサインをしましたが、10の武装勢力が存在し、衝突が散発しています。住民の暮らしは相変わらず厳しいものです。難民は国内外で400万人に達しました」と人道支援の緊急性を強調します。


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