2018年7月24日(火)
主張
経済団体セミナー
財界の思い通りにはさせない
日本経済団体連合会(経団連)の夏季フォーラムや経済同友会の夏季セミナーなど、経済団体の夏の会合が相次いで開かれました。毎年恒例ですが、財界の本音が出される場でもあります。中西宏明・日立製作所会長が経団連の会長に就任して初めて開かれたフォーラムでは、一部を非公開にして、産業構造の変化への対応など「行動宣言」を採択、同友会のセミナーでは「軽井沢アピール」に消費税10%の着実な実施とさらなる税率アップなどを盛り込みました。安倍晋三政権の下で、政権との“蜜月”ぶりが強まっている中、財界のこうした動きは危険です。
身勝手な要求並べたてて
経団連のフォーラムでは、アメリカのトランプ政権が検討している自動車の関税引き上げや、アメリカと中国などとの「貿易摩擦」について懸念が続出したといいます。フォーラムの後記者会見した中西会長は、産業構造の変化に対応するため「変化を先取りする勝負で、われわれも遅れずやっていきたい」などと強調しました。
採択された「行動宣言」には、中西会長が唱える、規制緩和などを加速する「ソサエティー5・0」の具体化や民間経済外交の戦略的推進に加え、「民間活力」を生かした産業の競争力強化や地方行政システムの改革など、大企業本位の経済政策強化が盛り込まれました。
5月末に経団連会長に就任した中西氏は、今月さっそく政府の経済政策の「司令塔」である経済財政諮問会議の民間議員を前経団連会長の榊原定征(さだゆき)・東レ相談役から引き継ぎました。経済財政諮問会議が6月に打ち出した「骨太の方針」では、消費税率の10%への引き上げや社会保障削減などを打ち出しています。経団連も「税率10%超への消費増税も有力な選択肢」と公言しています。中西新会長の下でも、財界が政府の経済政策を牛耳る体制が続きます。
財界人が個人の資格で参加する経済同友会の夏季セミナーで採択された「軽井沢アピール」はより露骨に、「大衆迎合に流れることなく国家をガバナンスする仕組みづくり」や消費税の「ポスト10%の議論と更なる税率アップ」などを打ち出しています。消費税増税で国民が負担した税金の大半は大企業への減税に回り、多くの大企業はカネ余りでため込んでいることに反省もなく、国民に負担を押し付けるのが財界の本音です。
22日閉幕した通常国会では財界が強く要求した「働き方改革」のうち、データ偽装などが問題化した裁量労働制の拡大が削除されましたが、労働法制の「更なる改革」(「軽井沢アピール」)、裁量労働制拡大法案の「早期の実現」(日本商工会議所申し入れ)など、財界はあきらめていません。財界の動きに監視を強める必要があります。
政権との“蜜月”の下で
見過ごせないのは安倍政権の下で財界との“蜜月”がいっそう強まり、財界本位の政治が進んでいることです。安倍政権の首相官邸で、今井敬(たかし)元経団連会長の親族でもある経済産業省出身の今井尚哉(たかや)氏が首相最側近(政務担当)の秘書官を務めるなど、経産官僚が大きな影響力を持っているのも、異常な大企業中心政治の表れです。
財界の政治支配の背後には経団連があっせんする巨額の企業献金があります。カネで動かす政治に終止符を打つ必要があります。