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2018年7月24日(火)

クロマグロ 大型船優遇に怒り

資源と生活・将来も守れ

千葉・勝浦の沿岸漁民

 クロマグロの資源管理をめぐり、1日から罰則付きの規制「漁獲可能量(TAC)制度」が始まりました。沿岸漁民からは「今回の規制は不公平だ」「産卵期マグロを取る大中型まき網船を規制すべきだ」など怒りの声があがっています。クロマグロの主産地の千葉県勝浦市の漁業者を訪ねて、実態や思いを聞きました。(内田達朗)


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 太平洋に面した勝浦湾西部に位置する松部(まつべ)港。漁船が20隻ほど係留され、勝浦西部地方卸売市場、地元漁協のあわび養殖センターがある拠点港です。

 「資源管理にはもちろん賛成だ。でも規制の中身もやり方にも、みんな納得していないよ」。真っ黒に日焼けしたマグロ漁師、堀川宣明さん(62)は憤りをあらわにしました。

廃業考える人も

 クロマグロが激減するなか、漁獲規制など資源管理が求められています。今回の規制では、大中型まき網船は約4500トンに対し、沿岸漁業全体で計2426トンまでに制限。

 千葉県への割り当ては22・1トンにしかなりません。堀川さんは「これでは1隻あたり数匹ほどです。いままで大量に取っていた大型船に比べ、沿岸への割り当てが少なすぎる」と指摘します。

 一本釣り漁と、はえ縄漁を営む鈴木吉造さん(69)は「子や孫のためにも資源を守る対策は必要だ。だけど、これでは本当に生活が成り立たない。私は年金があるからやっとやっているが、廃船した漁業者や廃業を考える人もいる。なかには船を取り壊した仲間もいる」と太い声で語ります。

 「“一本釣り漁師になりたい”と言ってくれる高校生がいる。このままじゃ彼らの将来のビジョンを描けなくなる。私たちが声をあげるのは、彼らの未来を守りたいからです」

何の相談もない

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(写真)「不公平な規制は見直しを」と語る鈴木正男組合長(右)と鈴木吉造さん=11日、千葉県勝浦市の松部港

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(写真)小型漁船が並ぶ松部港=11日、千葉県勝浦市

 外房海域の16の船団・約360隻が所属する千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合は1977年からキンメダイの産卵期の自主的な禁漁を行うなど資源管理に力を尽くしてきました。組合長の鈴木正男さん(68)は「組合として自主的に魚種ごとのルールを決めるときは、船団長全員の理解が得られるまでとことん話し合ってやってきた。今回は、罰則付きで何の相談もない。考えられない」と言います。

 勝浦市議会は、クロマグロ資源管理について沿岸小型漁船に配慮することや所得補償の実現を求める組合提出の請願と意見書を2017年12月に全会一致で可決しました。沿岸漁業を守ることは地域の住民ぐるみの要求です。

 鈴木組合長は「大中型船は、産卵期のマグロを取っている。こんなことをやっていれば、全体が減るのは当たり前。産卵期の漁獲をやめ、枠の配分を見直すことが必要だ」と強調しました。

「若者の思い つぶすな」

 今回のクロマグロ規制に対して、全国の沿岸漁民が怒りの声をあげています。

 6月25日。農水省前には「沿岸漁師の生活を守れ マグロ漁獲配分を見直せ」の横断幕や「産卵期のマグロをとるな」などのプラカードを掲げて、北海道から沖縄まで650人の漁民が結集しました。

漁民「資源守ろう」

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(写真)沿岸漁業者の経営を守れと、訴えるクロマグロ漁民ら=6月25日、東京・農水省前

 マグロ主産地の北海道、青森・大間、千葉、長崎・対馬、沖縄・石垣島の漁民が壇上から「漁師として踏み出した若者の将来をつぶすのか」「資源を守ろうと自主的に禁漁しているのに、大型船は産卵期のマグロを一網打尽にしている。大型船の規制こそ強めるべきだ」と訴えました。

 千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合の鈴木正男組合長は、全国沿岸漁民連絡協議会(沿岸漁民連)の代表世話人としてあいさつ。「一つひとつの浜の力は小さい。全国の沿岸漁業者が力を合わせよう」と呼びかけました。

 水産庁に対して(1)新たな漁獲可能量(TAC)規制の延期(2)小規模漁業を守るために沿岸漁業への配分の拡大(3)産卵期のクロマグロ漁の禁止(4)休漁への生活支援対策―を要求。「漁獲枠をなぜ水産庁が勝手に決めるのか」「クロマグロ減少の最大の原因は(産卵期のマグロを取る)大中型まき網漁業だ。小規模漁業者が原因ではない」と迫りました。

“乱獲”否定できず

 日本共産党の紙智子農林・漁民局長・参院議員は談話(3日)で、沿岸漁民の声を無視した制度強行を批判。小規模漁業者が持続できる漁獲枠の設定や休漁補償、漁業者・漁協との対話・合意づくり、規制の抜本的見直しを要求しました。

 田村貴昭衆院議員は、農林水産委員会で繰り返し追及。長谷成人水産庁長官は、漁協・漁業者の意見を聞いて規制をつくったという根拠を示せず(6月10日)、沿岸漁業者が指摘してきた大中型巻き網船の乱獲についても「資源に全く影響を与えていないわけではない」(6月19日)と否定できませんでした。

 鈴木さんは「漁師は海の上ではみんなライバルです。家族の生活があるから。でも次の時代を考えれば、手をつながなくちゃいけない。漁師が何を考え、何を言っているのか広く知らせ、海と漁業を守るために何が必要か、国民のみなさんで一緒に考えるようになりたい」。


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