2018年7月6日(金)
主張
禁止条約採択1年
「核なき世界」へ運動さらに
人類史上初めて核兵器を違法化する核兵器禁止条約が、国連会議で採択されてから7日で1年になります。米朝首脳会談の初の開催など平和と非核化をめぐる劇的情勢が展開するもとで、「核兵器のない世界」をめざす運動は、新たな段階を迎えようとしています。
激しいせめぎ合いの情勢
この1年の大きな変化の一つは、被爆者をはじめとする市民社会、反核平和運動の役割が飛躍的に拡大し、国際社会で存在感を高めていることです。政府レベルの国際会議でも被爆者の訴えには、核保有国の代表も耳を傾けざるを得ない状況になっています。今年8月の広島・長崎での原水爆禁止世界大会にもアイルランド、オーストリア、メキシコ、キューバ、ベネズエラなど、市民とともに禁止条約実現に尽力してきた政府がすでに参加を表明しています。
禁止条約を成立させたのは諸国政府と市民社会の共同です。国の大小ではなくて、すべての国が対等・平等に国際政治に参加し、市民と力を合わせ新たな世界をつくる時代になりつつあります。
禁止条約の発効には50カ国の批准が必要です。署名したのは59カ国、批准は10カ国です。批准の国内手続きに一定の時間がかかることは事実です。しかし、現状は、禁止条約を推進する勢力とそれに反対する勢力とのせめぎ合いを反映しているともいえます。禁止条約を支持してきたスウェーデンの国防相に米国の国防長官が、署名すれば防衛協力に否定的影響が出ると圧力をかけたと現地メディアが報じました。昨年の国連会議でも南アフリカ大使が、核保有国からアフリカ諸国に「会議に参加するな」との圧力があったと発言していました。国際的なレベルで、条約に反対する勢力の策動があることは想像に難くありません。
各国内でもさまざまな動きがあります。禁止条約を推進してきたスイス政府が「足踏み」を続ける中で、議会は政府に署名を求める決議を可決しました。北大西洋条約機構(NATO)加盟国で、禁止条約に反対するイタリアやノルウェーでは、政府に条約に参加する可能性について「調査」を求める決議が議会で採択されました。
日本共産党は昨年から安倍晋三政権に禁止条約への署名、批准を強く要求してきました。立憲民主党、社民党、自由党、参院会派「沖縄の風」も署名、批准を求めており、野党の共通政策に盛り込み、市民と野党の共闘を発展させていくことが期待されています。293自治体(4日現在)が、政府に署名、批准を求める意見書を可決しています。地方議会でも攻防が繰り広げられています。
共同の力を発揮する時
米トランプ政権もロシアのプーチン政権も、新たな核兵器の開発を打ち出しています。被爆国日本の政府が、かたくなに禁止条約に反対しているのも、米国の「核抑止力」=「核の傘」への依存を強めているからに他なりません。
「逆流」をのりこえ、「核なき世界」へ前進するために、国内外の運動の新たな発展が不可欠です。激動の情勢にふさわしく、禁止条約を実現した共同の力を、いかんなく発揮する時です。「ヒバクシャ国際署名」を大きくすすめることが重要です。1カ月後に迫った原水爆禁止世界大会の成功が強く期待されます。