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2018年7月5日(木)

主張

九州北部豪雨1年

人命優先で備えを強めてこそ

 福岡、大分両県を中心に大きな被害を出した九州北部豪雨災害の発生からきょうで1年です。記録的豪雨による土石流や流木が次々と家屋を押し流すなどして40人が犠牲になり、2人がいまも行方不明です。仮設住宅などで避難生活を強いられている人は1000人以上にのぼります。今年も台風7号や梅雨前線による激しい風雨の影響や被害の広がりが全国各地で心配されており、警戒が必要です。住民の命を守ることを最優先に、危険箇所のチェックと対策強化、避難の仕組みの再点検などを国や自治体が責任をもってすすめることが重要です。

猛烈な雨がもたらされ

 昨年7月5~6日の九州北部の激しい雨は、積乱雲が帯状に連なる線状降水帯によるものでした。対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んで線状降水帯がつくられ、同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたのです。朝倉市では、平年7月の1カ月分の雨量が、ほぼ1日で降ったところもあるほどすさまじいものでした。

 各所で土石流が発生し、山肌はえぐられ大量の土砂や流木が濁流にのって住宅や農地などを襲いました。家屋被害は全半壊や床上浸水など1600棟を超え、鉄道や道路は寸断され、地域の基幹産業である農林業にも深刻な被害を与えました。被災直後2000人を超えた避難者は現在も約1100人にのぼり、泥に埋もれたままの家屋や農地も残っています。同じ地域で住み続けることができるのかどうか不安を抱える人も少なくありません。被災者が希望を持てるよう、住宅再建をはじめ実情に見合った支援を積極的に行い、地域全体の復興をすすめることが必要です。国や自治体などが役割を果たすことが求められます。

 線状降水帯の豪雨はここ数年、全国各地で大きな被害をもたらしています。2012年7月の九州北部豪雨、14年8月の広島市の土砂災害は多くの犠牲者を出しました。15年9月には、鬼怒川を決壊・氾濫させ茨城県常総市の3分の1を水没させました。線状降水帯だけでなく豪雨による深刻な被害は毎年のように起きています。いまも台風や前線によって九州、四国、北海道などで激しい雨に見舞われ、河川の氾濫などが続いています。過去の経験や、従来の発想にとらわれることなく備えを整えることが急がれます。

 地球温暖化の進行にともなって世界各地で気象災害の多発が指摘される中で、記録的な豪雨は日本のどこでもおこりうるものです。

 短時間に一気に降る雨には、早期の対応がなにより求められます。それにふさわしい観測体制や、住民にたいして警報を素早く出し、避難を迅速にできる仕組みをつくっていくことが重要です。

あらゆる事態を想定して

 山間部では、山に接する住宅近くでもがけ崩れなどの危険箇所が多いと指摘されています。大都市部では、地下街が多いなど都市特有の危険な場所があります。それぞれの地域や地形の特徴や構造を把握し、危険地点の総点検や必要な対策、避難ルートや避難場所の安全性のチェックや、避難体制の仕組みづくりなど、行政が責任をもって実施していくことが不可欠です。「想定外」で人命が失われることはあってはなりません。


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