2018年7月4日(水)
急浮上 民営推進の水道法改定案
世界の流れに逆行
共産党が批判
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延長国会で安倍政権は、地方自治体の水道事業の運営権を民間企業が獲得する「コンセッション方式」を推進する水道法改定案の成立を狙っています。同改定案は昨年の通常国会に提出され衆院解散で廃案となりましたが、与党は今回、大阪北部地震での被害を口実に、「民間活力」で老朽化対策を進めると主張。日本共産党は、水道民営化によって国民の生命にかかわる分野で利益が優先され、老朽化などの諸課題の解決に逆行し、人件費削減や住民サービス後退を招くと批判しています。
改定案は、人口減少に伴う水需要・収益の減少や人材不足などを理由に「水道の基盤強化」「官民連携の推進」を掲げ、自治体を水道事業者としながら、施設の運営権を厚労相の許可で民間事業者に設定するものです。
厚労省によると、水道事業の現状は、法定の耐用年数を超えた水道管の割合(経年化率)は2015年に13・6%。職員数はピーク時に比べ3割減り、給水人口5000人未満の事業体では1~2人で、技能職は「ゼロ」となっています。
日本共産党の高橋千鶴子議員は6月29日の衆院厚生労働委員会で、民営化ではなく、水道事業の担い手の育成や、必要な財源を投じてライフラインを守ることこそ必要だと強調しました。
民営化が「老朽化対策」どころか弊害を生むことは海外の事例からも明らかです。欧米でも、水道料金が高騰し、設備投資がまともに行われないなどの問題が噴出(表)。2000年から15年3月にかけて民営の水道事業が再び公営化された事例は235件にのぼり、再公営化は世界の流れになっています。
政府はこうした海外の事例を踏まえ、サービス水準を保つためとして、民間事業者に対し「モニタリング(監視)」を行うと説明しています。しかし厚労省は質疑で、必ずしも自治体が行う必要はなく「第三者」を活用すると答弁し、高橋議員は「結局、『モニタリング』も民間委託になるではないか」と批判しました。
安倍政権は「日本再興戦略」で、コンセッション方式の導入を進める公共施設として、空港や下水道などと並び上水道を「重点分野」に位置付けています。世界の流れに逆行して、公共サービスの責任を投げ捨てる方向へと突き進んでいます。