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2018年7月4日(水)

主張

エネ計画閣議決定

民意も世界の流れも無視か

 国の中長期のエネルギー政策の方向性を示す「第5次エネルギー基本計画」を安倍晋三政権が閣議決定しました。計画案の段階で多くの国民、市民団体から原発依存から脱却し、再生可能エネルギーの拡大へ本格的転換を求める意見が相次いでいたにもかかわらず、2030年度の電源に占める原発の比率を2割以上にして、「ベースロード(基幹)電源」に位置付ける姿勢を全く変えていません。再生エネについても世界的な推進の流れに事実上背を向けています。国民世論にも世界のすう勢にも逆らう計画は撤回しかありません。

「原発依存」に逆戻り

 エネルギー基本計画は3~4年に1度改定され、第4次計画は14年に決定されました。この時も、安倍政権は東京電力福島第1原発事故への反省もなく、原発を「基幹電源」と明記し、原発推進姿勢を鮮明にしましたが、今回の第5次計画は、これを継承したうえで、再稼働路線をいっそう加速させるものになっています。30年度の電源構成での原発の比率を20~22%にするということは、稼働期限40年を超える老朽原発を含め全て再稼働させることを狙ったものです。東電が先日、建設工事再開を発表した青森県の東通原発をはじめ建設中の原発を視野に入れています。

 原発はひとたび事故が起きれば、その被害が空間的にも時間的にも広がる「異質な危険」を持つものであることは、7年以上たっても収束が見えない福島原発事故からも明らかです。政府が福島原発の事故の処理費を21・5兆円と試算するなどコストも膨大です。「原発依存」に逆戻りすることに全く道理がありません。

 基本計画が「核燃料サイクル政策の推進」に固執していることは大問題です。原発を運転すれば必ずプルトニウムなど使用済み核燃料が生まれますが、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まるなどして、核燃料サイクルは完全に破たんしています。日本が国内外に保有するプルトニウムは約47トン(原爆6千発分)にも上っていることに国際社会から強い懸念が表明されています。使用済み核燃料を増やす再稼働をやめるとともに、核燃料サイクルからも撤退すべきです。

 いま世界では太陽光、風力など再生可能エネルギーが大きく増えています。地球温暖化防止の「パリ協定」(15年)を踏まえ、脱石炭の流れも加速しています。

 再生エネについて「主力電源化をめざす」といいますが、30年度の電源比率は「22~24%」と依然低い目標です。少なくない国や地域が30年に40~50%の再生エネ導入を目標としており、日本は再生エネの普及で世界から水をあけられるばかりです。石炭火力発電をあくまで「基幹電源」として国内で推進するだけでなく、アジア諸国への輸出を官民一体で進める方向を示す基本計画は重大です。

声が届く政治の実現を

 原発依存をやめ、再生エネの飛躍的拡大を求める多くの国民の意見や署名が寄せられたにもかかわらず、「結論ありき」で基本計画が決定されたことは、民意に逆らう安倍政権の異常な姿を示すものです。国民の声が届く政治の実現が急務です。野党4党が衆院に提出した「原発ゼロ基本法案」の制定、原発ゼロ社会へ市民と野党がさらに力を合わせることが必要です。


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