2018年6月22日(金)
政府も認める脅威「緩和」 この期に及んで陸上イージス固執
費用莫大・配備に5年 浪費必至
小野寺五典防衛相は22日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備に関し、候補地である新屋演習場(秋田市)、むつみ演習場(萩市)を抱える秋田・山口両県を訪問します。しかし、北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威が減少する中、計画通りの配備に矛盾が生じています。
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「北朝鮮は、我が国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有しています」「北朝鮮の核・ミサイルの現状を踏まえれば、イージス・アショアは速やかに配備する必要があります」。防衛省が1日に地元に提出した説明資料は、「北朝鮮の脅威」を繰り返し強調して配備の正当性を主張していました。
ところが12日の米朝首脳会談では「朝鮮半島の完全な非核化」を合意。トランプ米大統領は記者会見で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)国務委員長が「弾道ミサイル関連の実験場の破壊を約束した」と述べました。
日本政府も米朝首脳会談の歴史的合意を歓迎し、菅義偉官房長官は13日の会見で、「極めて厳しい安全保障の状況がかつてより緩和された」「日本にいつミサイルが向かってくるか分からない状況は明らかになくなった」と認めました。
また、ハリス次期駐韓米大使は14日の米上院公聴会で、北朝鮮の弾道ミサイルを想定して昨年、韓国に配備されたTHAAD(高高度防衛ミサイル)について、北朝鮮の脅威がなくなれば「必要なくなる」と証言しました。
北朝鮮の弾道ミサイルを想定し、2000年代前半から日米韓3カ国が整備を進めてきた「ミサイル防衛」網そのものが大きな曲がり角にさしかかっていると言えます。
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しかし、山口県が「北朝鮮情勢の変化により、配備計画が見直される可能性はあるのか」と質問したのに対し、防衛省は15日、「我が国を射程に収めるミサイルが依然として多数存在しており…可及的速やかに取り組みを進める必要がある」と回答。あくまで配備に固執しています。
「イージス・アショア」は1基約1000億円で、莫大(ばくだい)な維持費もかかります。しかも、配備完了には5年以上かかります。膨大な浪費に終わる可能性が強まっています。