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2018年6月17日(日)

「森友」交渉記録に見る

本省指示「慎重に」から「協力」に 昭恵氏の影響大きい

 安倍晋三首相夫妻と学校法人「森友学園」の関係を知った財務省本省が、当初から国有地取引に深く関与していた―。財務省や国土交通省が公表した学園との交渉記録などから、そんな実態が浮かび上がってきました。「私も妻も一切かかわっていない」と繰り返す安倍首相の虚偽答弁疑惑があらためて問われます。(三浦誠)


 「当初は(国有地を)借受けて、数年後に購入するという処理を希望している」。鴻池祥肇・自民党参院議員の秘書は2013年8月13日、近畿財務局(近財)にそんな陳情をします。口利きは、学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=の依頼でした。

 同15日に近財は財務省本省に陳情内容を報告。本省から「慎重かつ丁寧に対応するよう指示を受け」ました。本省は「今後の進捗(しんちょく)は報告願う」と伝達。以後、近財は本省の指示を仰ぎ続けます。

「前に進めて」

 鴻池議員は、麻生太郎財務相の側近。そんな議員側の陳情でも、近財は本省の指示通り「慎重」に進めました。学園の資金計画をチェックし、「不十分」と近財は繰り返し伝えます。14年4月15日には「重大な判断を行う局面を迎えている」と厳しい態度に出ます。

 ところが約1カ月後、まともな資金計画の提出がないのに、近財は「学園の希望に添う方向」で協力すると伝えたのです。

 この間に何があったのか―。

 焦点は同年4月28日の籠池被告と財務局の面談です。籠池被告は、安倍首相の妻昭恵氏を小学校予定地に案内したことを紹介。昭恵氏と一緒に撮った写真を示し、「いい土地ですから、前に進めてください」と言われたと伝えました。

 この面談後、近財から相談をうけた本省は、「売払いを前提とした貸付けについては協力する」と回答。15年5月には貸付契約が成立しました。

契約時に配慮

 国有地の売払契約時にも、本省は昭恵氏の動向に気を配っていました。

 16年3月、学園は校舎建設中に地中からゴミが出たことを報告。大幅値引きのうえ売却するよう近財に迫りはじめます。

 「6月には棟上げ式も予定されており、安倍総理夫人も出席されることで調整している」。籠池被告は本省、近財に何度もそんな言葉をぶつけます。当時、昭恵氏は小学校の名誉校長でした。

 ここでも近財は本省に相談。その結果「棟上げ式までの工程に与える影響を最小限にする」方針が決まります。昭恵氏が来るとされた「棟上げ式」を意識していたのは明らかです。

 国有地取引を担当していた近財OBはこう指摘します。

 「当初『慎重に』と言っていた本省が、急に『協力する』と態度が変わった。私の経験では、国会議員や暴力団から迫られても、無理なものは無理と断っていた。しかし最高権力者である首相の妻の影響は大きい。影響がないなら、交渉記録にかく必要がない。昭恵氏の存在が“無理してでもやる”という本省の決断につながったのだろう」

図:森友学園の要望と財務省の対応の変遷

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