2018年6月13日(水)
「働き方」法案参考人質疑 参院厚労委
12日の参院厚生労働委員会の参考人質疑で、「働き方改革」一括法案について意見陳述した全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人、日本労働弁護団幹事長の棗(なつめ)一郎弁護士の発言(要旨)は次の通りです。
過労死防止法に逆行
家族の会代表世話人 寺西笑子さん
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朝、「いってらっしゃい」と送り出した家族が夜、遺体となって帰ってくる。夜、「おやすみ」といって寝た家族が朝、息をしていない。外出中に家族が首をつっていた。ある日突然、大切な家族の命を奪われました。長時間過重労働の末に理不尽な過労死に追い込まれたのです。
死んだ人は生き返りません。一家団らんは失われ、家族とのふれあいも、言葉を交わすこともなく、ただ遺影をじっと見つめ、喪失感と、救えなかったという自責の念に襲われます。私たちのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。
高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度は長時間労働を合法化し過労死を増やす恐れがあります。企業側が「勝手に働いて、勝手に死んだ。会社に責任はない」と、過労死の自己責任がまかり通る仕組みの高プロ制度は削除すべきです。
2月23日に加藤勝信厚労相と面談しましたが、大臣は「監督指導を徹底する」というばかり。そこで安倍晋三首相に5月16日に面談を申し入れましたが実現せず、冷たい対応だと感じています。安倍首相にはどうしても、家族の遺影を見て、人として命の問題を考えてほしい。
4年前、過労死防止法が成立しました。その時、私はこの参院厚労委で参考人として意見陳述しました。まさか過労死促進の法案について再び発言するとは夢にも思いませんでした。過労死防止法に逆行する「働き方改革」一括法案の強行採決は絶対にやめてください。
労災認定がされない
労働弁護団幹事長 棗(なつめ)一郎さん
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「働き方改革」一括法案の問題点を指摘します。
労働時間の罰則付き上限規制について、労働時間の時間外規定は「1カ月100時間未満、月平均80時間を超えない」とされています。過労死認定の水準です。労基法(労働基準法)が過労死水準を容認することになりかねません。上限規制は過労死や労災事故が起こらない水準まで下げるべきです。
高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度について、安倍晋三首相は「働く時間の選択や時間配分は労働者自らが決定する」といいますが、法文上には書かれていません。一つの仕事が終われば、次の仕事が降ってくるのが職場の実態です。
労災認定の実務では、ざっくりした記録では誰も認めません。何時から何時まで働いたと立証しないといけません。現場の労働基準監督官からは「高プロは労働時間の記録が残らない。だから立件のしようがなく、処罰できなくなる」と不安の声が出されています。
法案が定める「健康管理時間」は実労働時間でないので、労災認定されないし、残業代の支払いを命じることもできません。
「パソコンのログイン時間で(労働時間は)わかる」(加藤勝信厚労相)といいますが、私が担当した裁量労働制の労働者が死亡した事件では、使用者が自宅のパソコンを回収に来て、証拠隠滅をはかろうとまでしました。きちんと労災認定ができる客観的な労働時間を課さないといけません。
現在、法定労働時間規制のもとで働く労働者は40・8%にすぎず、今でも労働時間法制は十分に弾力的です。主要企業100社のうち約7割は今国会での成立の必要はないといっています。このような法案の強行成立はすべきでなく、長時間労働、過労死を助長しかねない問題を除去すべきです。