2018年6月10日(日)
米比など各国演習に陸自参加
加速する“多国間化”
アジアでの同盟強化狙う
米軍がアジアの日本以外の同盟国軍と実施する演習への自衛隊の参加が増えています。米国が、イラク撤退完了宣言(2011年12月)後の「アジア重視」政策への転換、1月の国防戦略でインド太平洋地域への関与、同盟国、協力国を軍事作戦に動員する態勢を強めるなかで、2国間から多国間への演習拡大が進んでいます。(佐藤つよし)
5月7~18日にフィリピンで実施した米軍とフィリピン軍の共同演習「バリカタン18」もその一つです。
今年の同演習には、米軍だけで陸海空・海兵隊、特殊作戦部隊合わせて約3000人、米比合わせて約8000人が参加。オーストラリア軍は、空軍P3哨戒機、陸軍派遣部隊を含む約60人が参加しました。
特殊部隊と訓練
自衛隊が参加するのは、2012年、17年に次いで3回目で、陸上幕僚監部広報室は、陸自西部方面隊の施設部隊、衛生部隊から14人が参加したとしています。米海兵隊のホームページのニュースも5月14日付で、米空軍第18施設中隊(沖縄・嘉手納基地)、フィリピン軍工兵とともに、陸自隊員が小学校建設を行ったと報じました。
バリカタンは、1981年に始まり、今回で34回を数えます。01年9月11日のニューヨーク同時多発テロ以降、「不朽の自由作戦・フィリピン」「東南アジアにおける対テロ戦争」の一環と位置付けられ、イスラム武装組織「アブ・サヤフ」に対する沖縄駐留の米陸軍「グリーンベレー」など米軍特殊部隊と比軍との共同対処訓練、米海兵隊を中心とした災害救援・人道支援訓練などを実施してきました。
米国の「アジア重視」転換後、米比演習から、南シナ海・東南アジア地域での米国と同盟国による多国間演習化、米軍の陸海空・海兵隊が参加する統合演習化が急速に進んでいます。オーストラリアは、13年にオブザーバーで、14年以降は毎年、正式に参加しています。
米陸軍も「アジア専任」の軍団司令部となった陸軍第1軍団司令部(米ワシントン州)の指揮下で14年から始まった「パシフィック・パスウエイズ」(PP)演習の一環として毎年参加しています。PPでは、ハワイ、ワシントン、アラスカ各州の旅団戦闘団(2000~3000人規模)が日韓豪・東南アジア諸国などと2国間演習を連続的に実施します。
バリカタン18では、本格的な実戦訓練も行われました。9日には米海兵隊の水陸両用強襲車両を使用し、ルソン島で米比共同の上陸作戦訓練を実施。米軍準機関紙「星条旗」(10日付電子版)は「ドゥテルテ比大統領就任(16年6月)後2年近くの間で最大の同盟の統合訓練」と伝えました。
戦争法の下で
陸幕広報室は陸自の参加する演習内容は「民生支援分野の建設プログラムと医療プログラム」としていますが、米陸軍のニュースは「オーストラリア、日本の部隊は、すべての主要な訓練に参加する」としています。
戦争法=安保法制のもとで、インド太平洋地域での多国籍部隊の軍事作戦に自衛隊を組み込む動きが強まっています。